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管理職の役割と責任~組織力を高め成果を出すスキルと心得

経営者と管理職の役割と責任:仕事の開始前の徹底事項のイメージ写真です。

成果を出すマネジメントのできる管理職に必要な5つの管理スキルと心得

成果を出すために管理職は何をすればよいのか迷っている人も少なくありません。成果を出すマネジメントは、部下と組織を連携させ、問題を解決することが求められます。そのためには、「権限と責任の一致」、「ベクトル合わせと目的共有」、「言葉の定義」、「マネジメントの内外区分」、「正の定義」を適切かつタイミングよく実行できなければなりません。管理職は、これらを実行するための役割と責任を負っています。
ここでは、成果を出すマネジメントのできる管理職の役割と責任を発揮するために必要な5つの管理スキルと心得を紹介します。

<目次>
マネジメントの基本は権限と責任を同時に与えること
管理職の権限と責任
社員の権限と責任
権限と責任をセットで与えることの意義
管理職の役割は「ベクトル合わせ」と「目的共有」の徹底
仕事開始前の「ベクトル合わせ」
目的共有の重要性
マネジメントの第一歩は「言葉の定義」をすること
国が変われば文化も異なる
一つの言葉に対する解釈は千差万別
一人ひとりの考えは異なると心得る
マネジメントの「内外区分」:4つの区分の考え方
内外区分の決定
内外区分の決定のポイント
会社にとっての「正」の定義が組織の結束行動を生む
人事考課での「正」の醸成
会社にとって必要な人材を周知徹底する

マネジメントの基本は権限と責任を同時に与えること

仕事をしていく中で、適切な権限が与えられれば、大きな責任も全うしようとするものです。
経営者が権限と責任を持つように、管理職や社員にも責任と同時に権限を与えることが大切です。

管理職の権限と責任

経営者・管理職には権限と責任があります。

【責任】ステークホルダーの満足を追求しつつ利益を上げて継続的に企業価値を高める
【権限】理念やビジョンに基づいて会社の方針を決める

どちらかが欠けたとき、正しいマネジメントを行うことは難しくなるはずです。

社員の権限と責任

管理職をはじめ、社員にも権限と責任が必要です。
ところが、現実には権限だけ、責任だけに偏ったマネジメントも少なくありません。
責任だけを押し付ける思いやりのない扱いは、会社にとって「百害あって一利なし」
当人のモチベーションが上がらないどころか、そもそも仕事の完遂自体が不可能になることもあります。

「権限と責任はセットで与える」べきなのです。
この2つがセットでないと、誰も自分の判断で仕事をし、責任を果たすことができません。

【責任】売上目標が120億円
【権限】あと5人の従業員を追加する

売上目標という責任を与えるなら、実現に向けた具体的な条件を決める権限も与えるべきなのです。

権限と責任をセットで与えることの意義

「権限と責任をセットで与える」ことは、
経営者は、より現場に対して目配り、心配りといった配慮を行うことができます。
目標達成を目指す現場も「条件を受け入れてくれたのだから」と真剣に仕事に取り組めるでしょう。
経営と現場や現場内にもコミュニケーションも生み出します。
お互いに知恵を出し合えるようになり、仕事はスムーズに回っていくでしょう。

管理職の役割は「ベクトル合わせ」と「目的共有」の徹底

ほとんどの仕事は、チームでの共同作業です。
新しいプロジェクトを開始する時は、最初にチーム全員の「ベクトル」を合わせることが重要です。
また、管理者は、円滑なPDCAを回すために「目的の共有」を徹底しましょう。



仕事開始前の「ベクトル合わせ」

この場合の「ベクトル」とは、次の8つの項目になります。

1. 背景や経緯
2. 狙い・目的
3. 現状の姿とあるべき姿
4. 課題
5. 課題への対応方針
6. アウトプットすべき内容
7. インプットすべき経営資源と納期
8. プロジェクトの推進スケジュール

あらかじめ決めておきたいのは以下のようなことです。

なぜこのプロジェクトを動かすのか? 
このプロジェクトの遂行を通して何を実現するのか? 
このプロジェクトが完遂すれば、現状から何がどう変わるのか? 
そのためにクリアすべき課題は何か? 
どうやってクリアするのか? 
精度優先でいくのか納期優先か? 
最終的にどのような形でアウトプットするか? 
一人ひとりはどのような役割分担で進めるのか?

焦って一人ひとりがバラバラの方向へ走り出しても、多くのムダが発生します。
これらを大枠にでも決めて共有してから仕事に取り組まないと、生産性は高まらないのです。

部門計画に基づいて「PDCA」を回していく管理者は、
まずはこの「ベクトル合わせ」をしっかりと行うことを心がけましょう。

目的共有の重要性

「PDCA」を回す役割を担う管理者は、
メンバーに仕事の「目的」をしっかりと伝え、共有することが大切
です。

「目的」とは、
このプロジェクトを通して何を実現するのか? 
最終的に何をどのような形にするのか? 

たとえば、「神社」の建築のプロジェクトがあったとします。
一人ひとり個別の役割についてだけの指示を与え、建築をスタートすると、
メンバーは全体像を理解していないため、指示されたことしかできません。
自分の仕事が終われば、あとは関係ないかのような仕事の進め方になります。
おそらくアイデアも出てこないでしょう。

何をつくるか?そのために何をするべきか?誰に何をしてもらうか? 
管理者が認識している全体像をあらかじめ共有しておくことが大切です。

「今回は、いつまでにこのくらいの規模の神社を建てます。
その神社のいわれはこうで、たくさんの参拝者があることが見込まれます」

スケジュールが厳しいとわかれば、自分の役割を終えても何かできることを探せます。
こういう進め方がいいのではないか、こうしたいといった改善のアイデアも出てくるかもしれません。
背景を把握していれば、部材一つひとつの取り扱いも丁寧に心を込めることでしょう。

「目的」を理解しているかどうかが、一人ひとりの意識や行動を左右するのです。
「PDCA」を回す人は、このことを肝に銘じてプロジェクトに取り組みましょう。

マネジメントの第一歩は「言葉の定義」をすること

「ベクトル」を合わせると同時に明確にしておきたいのが、「言葉の定義」です。

国が変われば文化も異なる

グローバル化の進展に伴って、仕事を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。
人種や文化が異なる人々と一緒に仕事をするケースも少なくありません。
日本では当たり前の慣習やルールが、外国の人には通じないこともあります。

全員の力を合わせ最大の成果を得るために、彼らとのベクトル合わせは欠かせません。
行動を統一するために、それぞれが持つ文化に配慮した伝え方が必要になります。

一つの言葉に対する解釈は千差万別

同じ仕事をしていても、同じものを見ていても、全員が同じことを考えているとは限りません。
伝える一つひとつの「言葉」が、全員に同じ意味で伝わるようにすることが大切です。

アメリカ赴任から帰国した社員に、人事役員が「国際化についての意見」を求めました。
その社員は「国際化についての話なら、経営そのものについての話になる」ことを伝えます。
すると人事役員に、「経営の話ではない」と反論されてしまいます。

その社員は「国際化」とは、「国境を越えて人・もの・金・情報が行き交うこと」であり、
真の国際化の実現は、経営全般に大きく関わると考えていました。
一方、人事担当役員にとって「国際化」と「経営」は全く別ものだったのです。

このギャップがある中で行う「国際化」議論で、建設的な答えは出せません。
この社員と人事役員は、「国際化とは何か?」「経営とは何か?」をきちんと定義して共有するべきだったのです。

一人ひとりの考えは異なると心得る

生物学の概念に「環世界」という言葉があります。
すべての動物はそれぞれ特有の知覚世界を持っており、それを主体として行動するという考え方です。時間や空間といった普遍的と思われるものでも、それぞれ独自の時間・空間で認識しているのです。

人間同士の場合、ある程度のことは共通認識があるものかもしれません。
しかし、仮に10人のチームで仕事をするなら、10人とも違う考えを持っていると考えるべきです。
異なる考え方や感じ方を持つ人が、一緒に仕事をするからこそ、大きな成果が期待できるのです。

マネジメントの「内外区分」:4つの区分の考え方

経営者は「人」「もの」「金」「情報」「場」などの経営資源を適切に配置していく必要があります。
社内でできることもあれば、社外の英知を結集する必要もあるでしょう。
経営者がやるべき大切なことは、現状の見極めに基づく「内外区分」です。

「内外区分」の決定

経営者は、社内の誰のどのような能力を使い、外部のどの企業と協力すれば、目標達成や新たな価値創造につながるのかということを見極めなくてはなりません。

お客様からすると、その仕事が社内の成果なのか、それとも社外スタッフによる成果なのかは関係ありません。お客様の手元に満足できる製品やサービスが提供されればいいのです。

その見極めに基づいて、どの仕事をどこで誰がやるのかという「内外区分」を決定します。
どの仕事を社内で行い、どの仕事を社外スタッフに依頼するのかという仕事の分担をするのです。

「内外区分」での分担を考えるときは、やるべき仕事を四象限で考えるのがベストでしょう。

縦軸を企業にとって重要かどうかという基準(コアコンピタンス度)とします。
横軸を自社の社員なのか外部スタッフなのかというやるべき人の属性とします。
重要度とそれに携わるスタッフの属性で「内内」「内外」「外内」「外外」という4つの領域に分けます。

「内内」とは、研究開発など、社内の人間がやるべき付加価値の高い重要な仕事
「内外」とは、社内でやっているけれども必ずしも社内でやる必要のない仕事
「外内」とは、外部で開発されたオープンテクノロジーのようなものを効率的に活用する仕事
「外外」とは、誰がやってもいい仕事でコストなどを基準にどこからでも調達できるような仕事

目標達成に向けてやるべき仕事の一つひとつを、それぞれの領域に割り振りましょう。

「内外区分」決定のポイント

四象限で仕事を「見える化」すると、
一つひとつの仕事について客観的かつ戦略的に考えることができます。

重要となるのは、やはり、企業にとって重要度の高い「内内」の仕事をどうするかということです。
研究開発など企業の核となる仕事であっても、必ずしも「内内」にこだわる必要はありません。
開発期間や価格など、さまざまな条件や視点を考慮して、何を「内内」にするのか、あるいは「外内」にするのかを決めます。

どうすれば最もお客様のためになるのか? 
競争優位性を保てるのか? 
理念・方針やビジョンといった哲学に合致するのか? 

条件を考慮する中で、「外内」となる外部の英知を効率的に活用することも求められるでしょう。
すでにある技術を買ったり、長期視点で「外」をパートナーとして育てたりする方法もあります。

その際にも、権限と責任をセットにすることは重要です。
企業の核となる仕事を「外内」にする場合も、その責任に見合う権限を与えなくてはなりません。

これまで日本の製造業における研究開発は、全てを内製あるいは系列化してものをつくることで製品の付加価値を高めてきました。しかし、技術の高度化、製品の開発サイクルの短期化、グローバルな競争の激化など、社会の環境が大きく変化しつつあります。

全てを内製するのではなく、外部の技術を上手く使って短期間で安く製品化すること、いわば「外内」を上手く活用することが求められています。

まさに「内外区分」は経営の要諦です。
経営者は常にこの4つの区分で内外区分を考え、タイムリーに施策を打たなければなりません。

会社にとっての「正」の定義が組織の結束行動を生む

企業の継続的な成長や発展のためには、
一人ひとりの社員が「この会社にとって何が正しいか」をきちんと理解して行動する必要があります。

考えも意見も、背景も異なる人たちを同じ方向へ向けて動かしていかなければなりません。
人を動かすための方法はいくつかありますが、人事考課もそのひとつです。

人事考課での「正」の醸成

人事考課は仕事に対するモチベーションに直結します。
そのため、その処遇は制度に基づいて適正に行われなければなりません。

経営者が、常に意識すべきなのは、人事考課に基づく処遇を「誰がどう感じるか」ということです。
ある処遇が「栄転」なのか「左遷」なのかは、その処遇を受けた人やその周りが「感じること」です。

変革を推進した人を厚遇し、変革に否定的な人や抵抗する人を冷遇したとします。
「会社にとって何が正しいのか」は一目瞭然。
「自分も変革を推進したい」と手を挙げる人が増え、変革が加速されるでしょう。
このような評価基準を周知し、その基準に基づいた評価を与えることで「変革を推進することが正しいことなのだ」というムード、雰囲気が醸成されるのです。

人間というのはどちらかというと慣れた方法を好み、大きな変化を嫌います。
慣れだけではなく、「今」の状態を失うことに対する抵抗もあるかもしれません。
変革や改革などに挑戦しようとするとき、必ず「今までのままで良い」という人が現れるものです。

そのようなときには、ひとつの部署をサンプルとして思い切った権限と責任を与え、変革を先行させるようにしましょう。そこで実際に変革を進め、成果を上げることを示すのです。
それこそが、組織全体を大きく変革の方向へと動かす原動力となっていくでしょう。

会社にとって必要な人材を周知徹底する

経営者の方々から「求める人材、必要な人材が社内にいない!」という言葉をよく聞きます。
しかし、実際にいないのではなく、社員が声を出したり、手を挙げたりできないだけかもしれません。

まずは、経営者自身が「必要な人材はこういう人材なのだ」と周知徹底することが大切です。
必要な人材に大きな権限と責任を与えることによって、社内の雰囲気は大きく変わるはずです。

会社はトップの器量どおりの会社になるものです。
経営者は、企業の成長や発展を目指すならまずは自分の器づくりを意識するべきだと思います。

さまざまなデータや情報を駆使して「会社にとって何が正しいのか」で意思決定をしていきましょう。
社内の雰囲気やムード、従業員一人ひとりのやる気は大きく変わります。
その雰囲気やムードこそが、「あるべき姿」へと近づいていく推進力となるのです。

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