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  1. 人材育成

人材育成の失敗で悩むときは「育成のワナ」に気づいてない~育成力を高める対応ポイント

部下の人材育成の悩みとワナの写真イメージです。

人材育成で陥りがちな3つのワナと対応方法

部下の人材育成がうまくいかず悩む人に共通するのは、人材育成で陥りがちな「育成のワナ」に気づいていないことにあります。
経験という名のもとに先入観で見ていたり、結果の数字など重視して表面的な指導をしたり、自分が育成するという意識が強く部下を縛り付けるということをしていないでしょうか。これら育成のワナと人材育成を成功させるための対応方法を紹介します。

 <目次>
人材育成を阻害する3つの「罠」とは?
人材育成の3つのポイント
人材育成の向こうにあるリーダー育成

人材育成を阻害する3つの「罠」とは?

人材育成の重要性は皆さん分かっていても中々思う様に行かないテーマです。何故上手く行かないのか、それは幾つかの「罠」があるからです。
それについて考えてみたいと思います。

先入観の罠

第一の罠は「先入観」です。この「先入観」を英訳すると、「Prejudice」ですから「Pre‐Judgement=思い込みで判断してしまうこと」を指します。
会社経営において大切なことは、人材育成の前に、「先入観」を排除すること、つまり先入観という罠に嵌らないことです。
先入観の罠は、例えば学歴・過去の人事査定・周りの噂等で人格を判断する等、枚挙に暇なしです。

私の長い会社での人材育成の実感ですが、高学歴であるから仕事ができるとは限りません。
大学入試に求められる能力と仕事を成し遂げる能力は一部ダブりますが一致する訳ではありません。
過去の人事査定が悪かった場合、過去の仕事がその人に合っていなかった、あるいは上司との関係が影響する場合もあります。
またポリティクスのようなもので、根も葉もない噂を立てられ、批判されることもあるでしょう。

「先入観」というバイアスを出来るだけ排除して、その人材のありのままを観ること、そうすればその人の可能性の芽を摘むことを避けることができます。
それができれば、人材育成の第一歩を踏み出したことになるでしょう。
しかし、言うは易く行うは難し!の典型のようなことですから、指導者の努力と訓練が必要です。

表面的な指導の罠

第二の罠は「表面的な指導」です。
言い換えれば「本質を捉えない指導」とも言えます。

例えば「コストダウン」の必要性を指導する時に、「コスト意識を持て!」と言う人と「当事者意識を持て!」と言う人が居るとして、どちらが本質的指導かと言えば、私は後者であると思います。
何故なら、当事者意識(オーナーシップ)がその人の具体的行動をイメージさせてくれ、結果を出し易いからです。

例えば、当事者意識(オーナーシップ)で行動する典型は家庭ですが、家庭を考えたとき具体的に自分がどう考え、行動するかをイメージできる様に思います。
つまり、家族のメンバー一人ひとりがお互いの役割や立場を理解し合って心から貢献しようとすれば、自ずとコスト意識が醸成され、結果が出易くなると考えられます。
一方の「コスト意識を持て!」という指導から、具体的な一人ひとりの取るべき行動のイメージが湧き難いことはご理解いただけると思います。
どの言葉を選んで指導するか、それは物事や人間の本質をどれだけ深く理解しているかと大いに関係があると思います。

場が人を育てる事を理解しない罠

第三の罠は「場が人を育てる事を理解しないこと」です。
例えばですが、自部門に居る優秀な人材をいつまでも自部門に在籍させようとする上司(飼い殺し上司)と、優秀だからこそ他部門へローテーションさせ、色々な経験をさせようとする上司とどちらが人材育成に貢献しているかを考えたいと思います。
会社としても部下としても言うまでもなく、後者の方が人材育成に貢献しています。
何故飼い殺し上司になってしまうのか、それは自分本位(自分の利益を優先する考え方)であるからに他なりません。
それを許さない会社全体の価値観が重要です。

人材育成の3つのポイント

科学的指導を重視する

科学技術の進展は目覚ましいものがあり、その影響は至る所に現れています。
それは人材育成の領域も例外ではありません。

例えば、アダプティブラーニング(所謂「適応学習」のことで、学習者一人ひとりの学習進度や理解度に応じて学習内容や学習レベルを調整して提供する仕組みのこと)は、AIを使って、一人ひとりに最適なテスト問題や参考書を提供したり、最適な学習環境を整えたりします。

企業における人材育成においても、指導する人の短所・長所の科学的分析、あるいは指導される人の特性の科学分析・理解が、一人ひとりに合った指導を可能にします。
これらによって「先入観」という人材育成の「罠」を回避することがかなりできる様になります。
しかしそれと同じ位大切なことは、部下に対する愛情を持って指導することは言うまでもありません。
それこそがAIではできない人間の役割に他なりません。

その上で、人材育成に資する仕事の内容・時間を上手く設計することが大切です。
例えば、仕事の時間を「パフォーマンス領域」と「学習領域」とに分ける方法です。
「パフォーマンス領域」は、可能な限りベストを尽くして物事をやり切る時間です。
つまり、現在持っている自分の実力を全面的に発揮してパフォーマンスを最大限出す時間です。
一方「学習領域」は、新たな能力(新しい神経回路をつくること)を獲得する為の時間です。
「パフォーマンス領域」ばかりでは能力進展は難しくなりますから、両方の時間を上手く調整すれば人は必ず育ちます。

また、身に付けたい能力を最小の要素に細分化して、その一つひとつを習得するまで練習すれば習得できます。
例えば、プレゼンテーション能力の場合、ロジカルに話をするスキル、相手に合わせた話し方をするスキル、聞きやすい声で話すスキル、緊張しないで話すスキル等でしょう。
そして、上手くできているかどうかを迅速にフィードバックすれば上達が速くなります。

本質を見抜く目を養う

そもそも「本質とは何か?」。これは大変重要な問いです。
辞書には「本質=あるものがそのものであると言い得る為に最低限持たなければならない性質、もしくはそうした性質からなる理念的な実体と言う場合もある」としています。
簡略的に言えば「ものごとの根本で、最も大事な性質」と言うことでしょう。
この「本質」を見抜くことができれば、枝葉末節に囚われず、色々な判断を精度良く行なうことができます。

私の感覚的なことですが、この「本質」を見抜くことで人材を活かし、長期的視点で会社を繁栄に導き、目標を達成し、そして一人ひとりの人生を有意義にすることができると思います。
残念ながら、この「本質」を理解できる人はあまり多くなく、従って「本質」を理解している人の言動を理解できず、短絡的な論争や確執を生む場合が結構あります。
しかし、本質は本質ですから、長期的には必ずどちらが正しいかの答えが出ることになります。

「本質」を理解する能力は、どうすれば得られるのか、勿論「才能」の部分は否定できませんが、努力も大事です。
例えば、次のようなポイントがあると思います。参考にしてください。

自然から学ぶ。(宇宙や人体の勉強をすると「摂理」を実感することができます)

時間軸と空間軸を伸ばして考える。(自分に都合の良い限られた狭い範囲で考えることを止める)

古典の名作で勉強する。(NHK の番組「100分de名著」は大変勉強になると思います)

自分の常識から離れる。(時代と共に常識は変わる。過去マラソンで水を飲んではいけないと指導した)

論理で的を絞る。(正しいデータを、正しい情報に変換し、論理で裏付ける)

シンプルに考える。(本質はシンプルである)

修飾を取り除く。(修飾が本質を覆い隠す)等

ここで管理職が避けなければならないのは、「自分は本質が分かっている!」と信じ込むことです。
上記7つ等を実践し、自省の心を忘れず、深い学びを継続しましょう。

適正な場を提供する

人が育つ為には、ある程度の知識や技術を習得することが基礎になります。
所謂「座学」は欠かせません。本を読んだり、講義を聴いたり、資格を取得したりして基礎を固めます。

しかし、それだけでは人は育ちません。
「適正な場を与える」ことが大変重要になります。
冒頭に書いた、仰木元監督は、ご存じの通り、野茂選手・長谷川選手・イチロー選手等の選手を大リーグに行かせ、名選手に育て上げました。
野村元監督は、著書で「組織が成長するか否かはリーダーの器次第」、「信頼は日々の選手との戦いから築かれる」、「判断は頭で、決断は腹で」等名言を述べられています。
古田選手・山崎選手は、野村監督という器の大きい「場」で育てられたのかも知れません。

「場」は挑戦の場です。
私の経験で恐縮ですが、30歳から5年間の海外駐在の場が私を大きく変えてくれたと思います。
海外拠点は規模が本社より随分小さく、与えられる責任も権限も相対的に大きくなります。
そして異文化の中で、英語や多言語を使って仕事をすることや日本の常識とは異なる常識の中で仕事をする事は、日本の本社での仕事の何倍も難しいと言わざるを得ません。
そして色々な失敗体験から多くを学ぶことになります。
しかし、難しい場を克服できた時、人は育っていると感じます。

ここで管理職が避けなければならないのは、「優秀な人材を自分の近くで囲ってしまう」ことです。
これは、囲われた部下にしたら大変な迷惑行為です。
しかし、これを堂々とやっている上司は少なくありませんし、それが悪いことと分かっていないケースもあるように思います。

なぜそうなるのか、それは、「自分の利益を第一優先に考える」からでしょう。
自分の利益を第一優先に考えることは真の人材育成の対極的概念と言わざるを得ません。
一方で、最近の転職市場の整備は、上司の我儘を許さない方向になっていますから、少しずつですが、状況は改善していると感じます。

人材育成の向こうにあるリーダー育成

「リーダーはリーダーにしか育てられない。」これはある意味真理だと思います。
人材育成のその向こうにあるのが、リーダーを如何に育てるかです。
それは、ある意味で「自分の後継者を育てる仕事」です。
もっと言えば「自分の存在意義を自らが否定する崇高な仕事」です。

リーダー研修を否定するものではありませんが、その前に、社内にリーダーは居るか、次世代のリーダー候補は居るかを確認しなければ始まりません。
もし居なければリーダーや次世代のリーダーを採用することが第一歩です。
なぜなら「リーダーはリーダーにしか育てられない」からです。

リーダーは、「自分がリーダーである!」と宣言するだけでは成立しません。
周りが「あなたについて行きたい!」と思われて初めてリーダーであると言えます。

これまで色々と人材育成のポイントを述べて来ましたが、リーダーになる為には、最後は「人間力」や「徳」と言ったものが重要になると思います。
この「人間力」や「徳」については、生まれ持ったものも大いに影響すると思います。
リーダーになるべくして生まれる人も居ると思います。
また全員がリーダーになる必要もありません。
自分はリーダーに適しているのか、フォロアーが向いているのか等を分析し、自分の将来のあり方を決める以外にないのではないかと思います。

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