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仕事の目標設定のコツ~目標を分類して仮説と実験で実現できる目標を設定する

企業が永続的に発展するマネジメントとは:方針や計画の進め方のイメージ写真です

マネジメントの進め方・目標設定・人の動かし方

「未来についての仮説を立て、その仮説に基づいて行動し、理論で証明する」
この科学的アプローチを繰り返し、組織を永続的に発展させるための目標を設定しましょう。

あるべき姿の実現のためには、どのフェーズにも適切な目標設定が必要です。
組織を成す「人」を、うまく巻き込み、動いてもらうことも欠かせません。
率いる者が、適切な伝え方を心得ておくことも大切です。
各社員に業務計画を立てさせることは、企業の無形資産につながります。

では、科学的アプローチ、目標設定、人の動かし方などについて確認していきましょう。

<目次>
「科学的アプローチ」で仕事の目標を設定する
・できるだけ正確な未来についての仮説を立てる
・仮説に基づいて、実験(行動)を開始する
・理論で証明する
仕事における目標とは
・絶対的目標と相対的目標
・必達目標と希望目標
・希望目標を掲げる意義
目標達成に向けて人の動かし方を計画する
・「Before」と「After」の対比で人を動かす
・リーダーが気を付けるべき思い込み
業務計画をOJTツールとして活用する
・計画することに隠れるOJT要素

「科学的アプローチ」で仕事の目標を設定する

カリスマ経営者の体験談などで、勘や信念、ひらめきに導かれたということを見聞きすることがあります。
確かに、起業のときはそれで良いかもしれません。
しかし、企業とはゴーイングコンサーン(*2)ですから、一発当てれば良いというわけにはいきません。
短距離走のような瞬発力よりもむしろ、フルマラソンを走り切る継続性が求められます。

継続性を得ようとするときに重要なのが、仕事を「科学的アプローチ」に基づいて進めるということです。
これにより、マネジメント力を向上させることができます。

ここでいう「科学的アプローチ」とは、「仮説を立てて、実験し、理論で証明する」ということです。
では、この「科学的アプローチ」のステップについて、ひとつずつ見ていくことにしましょう。

*2:ゴーイングコンサーンとは
企業の永続を前提とする考え方のこと。人の命には限りがあるが、企業は継承により永続が可能。
経営の計画、遂行は継続することを前提にして進められる。存続の可能性を測る会計上の用語でもある。

できるだけ正確な未来についての仮説を立てる

科学的アプローチで仕事をするための最初のステップは、できるだけ正確な未来についての仮説を立てることです。一言で未来についての仮説といっても、その可能性は無限にあります。

まず、自らの「あるべき姿」を決めます。
企業を取り巻く経営環境や地球環境についてのことも含め、無数の可能性の中から選択します。
そして、現状とのギャップを埋めるための「課題」を見つけ出して「取るべき施策」を決めるのです。

その際に必要となるのが、自らの「信念」
また、「哲学」や、人文科学、自然科学、社会科学など、さまざまな分野にまたがる基礎教養とも言える「リベラル・アーツ」、あるいは「歴史」といった幅広い見識も役立つものとなります。

そして、自分自身が決めたことが間違っているかもしれないという畏れを抱き続けることも重要です。
また、人智を超えた何か、サムシンググレイト(※)の存在を意識することができれば、「自分が絶対ではない」という戒めが保てるでしょう。

一方で大胆に、一方で謙虚に、「あるべき姿」と「課題」「取るべき施策」についての仮説を立てるようにしましょう。

※サムシンググレイトとは
「人智を超える何か」「偉大なる何者か」「あらゆる生命の大根源」などさまざまな表現がある。
世界や宇宙規模での生態系を考えるとき、人間を含めた生物や植物の存在には、人の意思では及ばない域がある。サムシンググレイトの目に見えない存在により、すべての調和が保たれている。

仮説に基づいて、実験(行動)を開始する

科学的アプローチの次のステップは、仮説に基づいて、実験(行動)を開始することです。

仮説が正しければ成果が出ますし、正しくなければ成果は出ないでしょう。
実験(行動)の間にも、仕事を取り巻く環境は時々刻々変化します。
ですから、その変化も考慮した仮説設定をしていきます。
そうしないと、期待した成果が出ないことにもなりかねません。

自然科学との最大の違いはここにあります。
科学的アプローチで仕事を進めるにあたっては、変化が当然という周辺環境を読んで行動を決定していく必要があるのです。

理論で証明する

科学的アプローチの最後のステップが「理論で証明する」です。
「仮説」「行動」「成果」の因果関係を整理して「反省」というフィードバックを加えます。
これにより、その組織を永続的な発展へとつなげる仕組みができあがります。

「反省」とは結果が出たこと、出なかったことの理論的証明でもあります。
このプロセスを経て、再び「仮説」を立て、「実験」を行い、「理論」で証明することを繰り返すのです。
それによって、企業はゴーイングコンサーンとしての使命を全うすることができるようになります。

仕事における目標設定

私たちは仕事を通して一定の成果を得ることを目指します。
一人ひとりがただ闇雲に目の前の仕事をしていても、望むような成果を得ることは難しいでしょう。

より大きな成果を得るためには、一緒に仕事をする人と一致団結して同じ方向に向かって邁進することがポイントです。そのように結束して仕事に向かい合うための第一歩となるのが「目標を決める」ということです。

絶対的目標と相対的目標

決めておくべき目標には2種類あります。

経営者の哲学や信条などから決める絶対的なもの
競争相手などの存在を意識して決める相対的なもの

多くの企業では、ビジョンとして絶対的な目標を描き、経営計画として具体的な数字目標や行動指針などが決められるでしょう。私たちは日々の仕事の中で、その数字の達成を目指します。

全員が同じ数字目標を共有し、その目標を達成するためのあらゆる施策について考え、それらを一つひとつ実践し目標を達成していくことによって企業は成長していくのです。

必達目標と希望目標

気を付けたいのは、目標を決める際に、必ず2つの目標を設定することです。

ひとつ目の目標は「どうしても達成しなければならない目標=必達目標」
もうひとつは「できたらここまで到達したいと思う目標=希望目標」
「必達目標」ではなく「希望目標」を達成するためにどうすれば良いかを考え、行動することが大切です。

仕事の環境は常に変化しています。
目標達成を目指す上では困難な状況(リスク)も発生するでしょう。

そのようなリスクが現実になったとして、「必達目標」すらクリアできなければ大きなチャンスを逃します。
場合によっては明日からの仕事がなくなってしまうかもしれません。
極端な場合には、企業の存亡すら危うくなることもあるでしょう。

「必達目標」を上回る「希望目標」を設定し、「希望目標」を目指していれば、何らかのトラブルが発生しても慌てることはないのです。たとえ「希望目標」を達成できなかったとしても「必達目標」はクリアできている確率が高いのです。

たとえば、飛行機に乗るためには少なくとも30分前くらいには空港に着いていなくてはなりません。
これが「必達目標」です。必達目標を基に予定を立てて行動すると、電車の遅延などの想定外のトラブルが発生した場合に間に合わなくなるかもしれません。そのようなトラブルにも対処できるよう、1時間前に空港に着くように行動することが「希望目標」です。

希望目標を掲げる意義

「希望目標」を設定することの意義がもう一つあります。
人間には無限の可能性があるということです。

多くの人は目標に向けて努力をします。
その結果として、予想をはるかに超える成果を上げることも少なくありません。
そのような人間の可能性についてきちんと想定し「希望目標」を掲げることも大切なことなのです。

目標達成に向けて人の動かし方を計画する

マネジメントの仕事というのは、自分で動いて実現するというよりは、人を動かして実現することが多いものです。ですから、やりたいことや目指す目標を伝え、それをきちんと理解してもらい、みんなで実現することが大切です。

悪いところを改めて良くすることを目指す「改善」
従来の制度などを根本的に改めて新しいものにすることを目指す「改革」

いずれも、ひとりでは実現不可能です。
周囲を巻き込んで一緒に動いてもらわなくてはなりません。
では、自分の考えを正しく理解してもらい、協力してもらうためにはどうすれば良いのでしょうか?

「Before」と「After」の対比で人を動かす

「改善」や「改革」をリードする人に協力する立場の時、協力しやすいケースと、協力しにくいケースがあります。

目標だけを提示されて「これを実現するために努力してほしい」と言われても、なかなか協力することが難しいものです。

逆に、「今はこうだけど(=Before)こうしたい(=After)」という現状と将来の目指す姿を対比し、何をどのように変えたいのか、変えるべきなのか、ということを提示されると、きちんと自分のやるべきことを理解し、協力しやすくなります。

リーダーが気を付けるべき思い込み

リーダーが陥りやすいのが、自分に分かっていることを「みんなも当然知っているだろう」と考えてしまうことです。

各々、知っていることや考えていることは異なります。
従って、「改善」や「改革」の方向性だけを力説されても分からないことが多いのです。
方向性だけの提示で理解したような気になっていても、後になって、実は理解できていなかったとわかることも少なくありません。

いざ「改善」や「改革」に着手しても、それぞれが目指しているものがバラバラでは期待した結果は得られません。最初にボタンを掛け違えてしまうと、最初に戻ってやり直す必要が出てきます。
せっかくの時間や労力がムダになってしまうばかりか、場合によっては取り返しのつかないケースにもなりかねないのです。

大切なのは、現状についてリーダーがどのように認識しているのかを提示してあげることです。

その上で、現状のどこが問題なのか、問題部分をどのように変えたいのか、あるいは根本的に刷新したいのかを伝えましょう。

人間というのは「変化」に敏感です。
何をどう変えるのかという「変化」が明らかになっていると理解しやすいのです。
ですから、「Before」と「After」を対比させて「改善」や「改革」のあり方を伝えることが大切です。

あまり細かく変化を決めすぎてしまうと、一人ひとりのアイデアの自由度が少なくなってしまいます。
ここだけは譲れないというキーの部分だけを決めておき、後は自由に意見を出し合えるようにすることを心がけましょう。

業務計画をOJTツールとして活用する

ビジョンや経営計画などに基づき、会社全体の年度計画が立てられ、さらに部門ごとの年度計画がつくられます。
この部門目標を受け取った部長は、部のメンバーの一人ひとりの目標へと落とし込みます。
ここで重要なのは、部下に毎月3カ月先までの計画や目標を作成させてそれを実行させることです。

計画することに隠れるOJT要素

たとえば、5~7月の業務計画に基づいて、5月が終わった段階でチェックして6月の詳細なアクションを決定します。それと同時に、6月から向こう3ヶ月の新たな業務計画を立てます。
つまり、常に3カ月先を見ながら今目の前にある仕事に取り組むようにするということです。

このように3カ月単位で業務計画をつくる目的は、計画的な業務遂行にあります。
しかし、実はこの業務計画にはそれ以上に重要な役割があります。
「部下のOJT」にもなるということです。

まず、3カ月先を見据えた業務計画を作成すること自体がトレーニングになります。
同時に、各部下がつくった「3ヶ月業務計画」をもとに、部門長はいろいろな会話ができます。

たとえば、先月の業務に関する進捗状況を確認することができます。
一人ひとりの目標や成果が、部門全体や会社全体の中でどのような役割を担っているかも伝えられます。部下の目標達成意欲を高めることに有効のはずです。
目標に届かなかったら一緒に「なぜなぜ」を繰り返し、問題点を洗い出して改善に取り組むこともできていくのです。

管理者やリーダーにとって、業務計画を単なる計画遂行のためのツールに終わらせてしまうのは、もったいないことなのです。業務計画によって、部下を育てる意識を持ち、目に見えない資産を積み上げる努力をしていきましょう。

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