目標を改善と課題に分けて具体性・計量性・達成可能性・関連性・期限で設定する
目標設定では、現状の改善目標と未来の課題解決目標を分けて立案しなければなりません。改善では、現状の問題に着目し、課題解決では、めざす姿に着目して目標を設定します。
目標設定のアプローチでは、目標に対してSMARTの法則の具体性・計量性・達成可能性・関連性・期限で整理し、立案するようにします。
このような目標設定の方法とコツを解説します。
<目次>
問題点と課題の目標の違いを理解する
SMARTの法則で目標設定をする
目標を必達目標と希望目標に分けてセットする
改善型目標達成の為の仕事の設計~PDCAを回すしくみづくり
課題対応型目標達成の為の仕事の設計~あるべき姿を描く
目標を目的実現の手段とする
問題点と課題の目標の違いを理解する
まず目標設定を考える前提として、「問題点」と「課題」の違いを理解する必要があります。「問題点」
は、現状の姿に着目して、「何が問題か、改善すべきところはないか」を考えた結果として出てきます。
一方、「課題」とは、将来のあるべき姿に着目して、「あるべき姿と現状の姿にどんなギャップがあるか」を考えた結果出てくるものです。
したがって「問題点」なら「改善する」、「課題」であれば「対応」するがそれぞれにセットとなる表現です。
つまり「問題点への対応」あるいは「課題を改善する」という表現は正確ではありません。
この「問題点を改善」する為の目標設定を「改善型目標設定」、「課題へ対応」する為の目標設定を「課題対応型目標設定」としています。
仕事ができる人材になる為には、2種類の目標設定の仕方をマスターしなければなりません。
2種類とも自分勝手な目標を立てるのではなく、「方針管理」に基づいて、会社全体や部や課の目標を達成する為の「役割分担」としての目標でなければなりません。
以下に2種類の目標設定を説明します。
改善型目標
現状に着目し、現状の問題点を改善する活動です。この活動は、問題点を改善する活動ですから、「問題(トラブル)を無くす」ことが主な目標になります。
従って「納期(問題が無くなる日時)」が重要な目標になります。
課題対応型目標
現状と将来のあるべき姿のギャップに着目し、そのギャップをどう埋めるかの施策を立案し実行する活動です。
この活動は、将来のあるべき姿を実現する活動ですから、「あるべき姿を定量的に定め、それを実現する」ことが目標になります。
従って「定量的な将来のあるべき姿の実現と納期」が重要な目標になります。
SMARTの法則で目標設定をする
SMARTの法則は、様々なビジネスシーンで「目標設定」のために使用されるフレームワークです。
「S:specific(具体性)、M:measurable(計量性)、A:achievable(達成可能性)、R:relevant(関連性)、T:time-bound(期限)」のことです。
S:specific(具体性)
漠然とした目標ではなく、明確で具体的な目標を設定することによって、パフォーマンスの向上が期待できます。
M:measurable(計量性)
目標が達成できたかどうかをどのように測定するかを目標設定の段階で明確化することで、正確な評価や今後のやるべきことが明確になります。
A:achievable(達成可能性)
達成可能な目標を設定すれば、モチベーション高く行動することが可能になります。
R:relevant(関連性)
その目標を達成することが何に繋がっているかを意識すると、モチベーションを高め、また維持しやすくなります。
T:time-bound(期限)
その目標を達成する明確な期限を決めないと体的な行動を決定できません。
改善型目標にしても、課題対応型目標にしても「SMARTの法則」は有効であり、これを意識した目標設定をする必要があります。
しかし其々の目標に「SMARTの法則」をどのように適応するかには、項目毎の軽重があります。
改善型目標は、S:specific(具体性)、M:measurable(計量性)、T:time-bound(期限)が主なポイントであり、課題対応型目標は、M:measurable(計量性)、A:achievable(達成可能性)、R:relevant(関連性)、T:time-bound(期限)が主なポイントになります。
目標を必達目標と希望目標に分けてセットする
第1の目標は、「どうしても達成しなければならない目標」=「必達目標」、第2の目標は、「できればここまで到達したいと思う目標」=「希望目標」です。
GEのCEOだったジャック・ウェルチ氏は、著書の中で、「ストレッチ」ということを言っています。
これは、自分自身ができると思っている以上のことを成し遂げる、という意味です。
つまり、希望目標は、一種のストレッチ目標なのです。
善意の人間は、目標を与えられれば、それをなんとか達成しようと努力します。
そんな努力の結果、当初予想もできなかったほどの成果を上げることがあるのです。
「希望目標」を設定する利点の第一は、予想をはるかに凌駕するような成果の可能性を取りこぼさないことにあります。
一方で、仕事の環境は常に変化していますから、目標達成をする上で困難な状況(リスク)もしばしば発生します。
「必達目標」とはどんな場合でも達成しなければならない目標ですから、例えそのような状況が起こってもこれを変更することはできません。
ですから、予めリスクが現実になることを予測し、「希望目標」を設定した上で、そちらを当面の目標として施策を積み上げ、実行していれば、突発事項が発生しても慌てることはありません。
「希望目標」を設定する第二の利点はここにあります。
もし、予測したリスクが顕在化しなければ、結果は「必達目標」を上回る希望目標の実現となるわけですから、この点を問題とする人はいません。
だからこそ、成果の目標設定には、常に二種類のゴールを用意するべきなのです。
改善型目標達成の為の仕事の設計~PDCAを回すしくみづくり
現状の問題点を改善する活動ですから、現状の問題点の原因を正確に把握することが第一です。
所謂現象に対し、「なぜなぜを5回繰り返す」ことで、真因を見付け出し、真因に対する対策を立案します。
この対策を何時までに完了させるかが「仕事の設計(目標設定と施策の立案)」です。この活動は一度限りではなく、継続的に行ないます。
所謂PDCAサイクルを回しながら、仕事のやり方を改善し、少しずつより良いやり方に近づけます。
この活動は、QCサークルのような小集団活動が有効です。
そしてQCの7つ道具(パレート図・特性要因図・グラフ・管理図・チェックシート・ヒストグラム・散布図)等を活用し、データーに基づく対策・納期を立案します。
この対策の難しさによって仕事の納期は左右されますが、お客様へのご迷惑を最小限にするためにも、納期優先の目標設定が必要です。
もう一つ重要なことは、この活動を通じて、人材育成・職場能力の向上を図ることです。
人材育成・職場能力の向上という目に見えない財産が、PDCAのPを高度化する原動力になります。
人材育成・職場能力の向上に関する目標設定(人や職場能力のレベル目標等)も必要です。
課題対応型目標達成の為の仕事の設計~あるべき姿を描く
現状と将来のあるべき姿のギャップに着目し、そのギャップをどう埋めるかの施策を立案し実行する活動ですから「現状との対比において将来のあるべき姿」をどう描くかがポイントです。
この活動の難しさは、「将来のあるべき姿」をどのように導き出すかにあります。
「将来のあるべき姿」は現状において現象化していませんから誰にも見えません。
この見えないものを高度な企画力を持って描く必要があります。
また、長期的な視点で自社の「将来のあるべき姿」を描く戦略性の高い仕事になりますから、ある意味で自社の将来の盛衰を決定する可能性があります。
例えば、業界の構造から自社の「将来のあるべき姿」を導き出す場合で言えば、マイケル・ポーター(アメリカの経済学者)が提唱するようなファイブフォース分析(5つの競争要因分析…業界内の競争・売り手の交渉力・買い手の競争力・代替品の脅威・新規参入の脅威)も必要でしょう。
また、自社の企業理念・環境分析・強み分析等から、経営哲学を持ってビジョンとしての「将来のあるべき姿」を描くことも必要になります。
この場合の「仕事の設計」は長期・中期・年度経営計画を策定することに他なりません。
そして「方針管理」の実践を通じて、部・課・社員一人ひとりの目標に切れ目なく展開され、実行されなければ実現しません。
目標設定は経営計画策定そのものであり、売上・利益・生産性・シェア等、多岐に亘ります。
また、経営資源計画にも「目標設定」は不可欠で、人・もの・金・情報等の経営資源を5W1H的に明確化したものが、目標設定になります。
目標を目的実現の手段とする
そもそも目的とは何か、それは会社の「使命」や「存在意義」です。
そして、目標とは、その通過点であり、目的実現の手段です。
この点を良く理解して、リーダーは目標設定をすることが重要です。
P・F・ドラッカー氏は「独自の商品やサービスを提供すること」と「働く人を活かす」ことを企業の目的に挙げています。
その目的達成の為に、お客様に喜んでいただけるような商品やサービスを提供し、その結果としての売上や利益を「目標」に定めます。
つまり、売上目標や利益目標は、自社の事業を通じて社会に貢献できたかどうかの尺度でなければならないということです。
言い替えれば、目的実現が企業の実態であり、目標達成は企業の実態が鏡に映った姿と言えるかもしれません。
良い仕事をし、社会に貢献することを目的にできるかどうかで、社員の深いレベルでのモチベーションに繋がるかどうか、そして会社が永続的に繁栄できるかどうかを占うことになります。