適正な権限と責任を与えれば、人はその能力を発揮し結果を追求できる
経営資源として“人・もの・金・情報”が一般的ですが、これらに加え“場”を第5の経営資源として捉えると、結果を追究できるようになります。
つまり意思決定の“場”、情報共有の“場”、自主研等のチームで改善を考える“場”等の良し悪しが、会社の未来の多くに関わっていると考えられるからです。
そして、夫々の“場”に参加するメンバーが“当事者意識”を持って参加することが大切です。この“当事者意識”を持つ上で、経営者・管理者が「権限と責任の一致に拘って人を動かす」姿勢は、とても重要になります。
“権限と責任の一致に拘り、人を育てる”ためにやるべきこととは何でしょうか?それを説明していきます。
<目次>
意識が変われば行動が変わり、行動が変われば会社が変わる。
権限と責任の一致に拘って人を動かす。
仕事の第一歩として「言葉の定義」を明確化する。
仕事を始める前に全員の“ベクトル”を合わせる。
“経営の7つの基軸”の一つとして“摂理として権限と責任の一致に拘る”を理解する。
意識が変われば行動が変わり、行動が変われば会社が変わる。
「心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる。」
は、ウィリアム・ジェイムズ(心理学者・哲学者)の言葉です。
この言葉から学ぶところは多く、企業変革を志向する上で、「意識が変われば行動が変わり、行動が変われば会社が変わる。」と啓蒙しています。
では企業変革を実践する上で、社員一人ひとりがどの様な意識になれば良いのかを考えると、最も重要なことは“当事者意識”になることではないででしょうか?
例えば、会社として“コストダウン”を実践する時に必要となるのは“コスト意識”と思いがちですが、実は、“当事者意識”が鍵なのです。
自分の家庭だったらどうするのか?
どの様な行動を取るのか?
家族の一員としてどう貢献するのか?等
このように、“当事者意識”=自分のこととして、問題を捉えることができれば、「これは節約しても良いが、これは節約してはいけないのではないか?」等、会社の問題を自分ごととして、捉えることができます。そして、お客さまのへの価値提供の上にたって“峻別”もできるようになります。
社員一人ひとりが真の“当事者意識”をもつことができれば、会社においても「意識が変われば行動が変わり、行動が変われば会社が変わる。」という真の仕組みが動きだしたといえるのです。
権限と責任の一致に拘って人を動かす。
この “当事者意識”を醸成する上で、最も重要なことが、経営者・管理者の「権限と責任の一致に拘る姿勢」です。
これまでの経験で、最も苦しかったのは「責任を与えられたのに、権限を与えられなかった時」です。
例えば、これから部門長としてその部門を率いる際に、
「その部門方針の根幹を決定する会議に参加できなかった。」或いは
「その部門の構成員を選ぶ際に人事権を与えられなかった。」或いは
「前任者からの引継ぎが無かった」等のケースです。
勿論それでもその仕事を放棄することなく、粘り強く自分の責任を全うできる状況を一歩一歩創るに違いありませんが、そこに至る時間が必要になってしまいます。
この様な事態は、経営者等が部下に仕事を与える際に配慮すれば、避ける事が出来ます。その配慮に拘ることができる会社こそ、一人ひとりの“当事者意識”を醸成できる会社となります。
反対に「権限を与えられたのに、責任を与えられなかった時」は、コンプライアンス上の問題が発生します。その代表例が会社法における取締役に対する“株主代表訴訟”です。組織として権限を与えたならば必ず責任も付与しなければならないのです。
仕事の第一歩として「言葉の定義」を明確化する。
「言葉の定義」をしっかりせずに、部下に仕事をさせては“権限と責任の一致”以前の問題です。
例えば、“〇〇事業の拡販戦略”の策定を部下に指示する場合、“戦略”とは何かを定義する必要があります。
例えば、“戦略”の構成要件は、
- 明確な目標(定量目標・納期)
- シナリオ(数あるシナリオの中からこれを選ぶとの理由の明確化含む)
- 全体を巻き込む(経営を生産性の概念として捉え、協業等の他社を巻き込んだスピード感ある目標到達計画を織り込む) とする等。
こうした定義を最初に、明確化することが大切です。
仕事を始める前に全員の“ベクトル”を合わせる。
会社におけるほとんど全ての仕事は、部・課等、チームでの共同(協働)作業です。従って、日々の仕事は勿論、特に何か新たなプロジェクトをスタートする時等は、最初に全員のベクトルを合わせることが重要です。
例えば、
- 背景と経緯
- 狙いと目的
- 現状の姿とあるべき姿
- 課題
- 課題への対応
- アウトプットすべき内容
- インプットすべき経営資源と納期
- プロジェクトの推進スケジュール 等
です。
- 何故このプロジェクトを動かすのか。
- このプロジェクトの遂行を通じて何を実現するのか。
- このプロジェクトを完遂すれば、現状から何がどう変わるのか。
- その為にクリアすべき課題は何か。
- どうやってクリアするのか。
- 精度優先でいくのか納期優先でいくのか。
- 最終的にどの様な形でアウトプットするのか。
- 一人ひとりはどの様な役割分担で進めるのか。
まず、こうしたことを決め、プロジェクト関係者全員が共有し、理解することが重要です。この様な努力が、一人ひとりの“当事者意識”の醸成に必ず繋がります。
“経営の7つの基軸”の一つとして“摂理として権限と責任の一致に拘る”を理解する。
トヨタ・デンソーから学び、私が理解する経営の基軸については、自書「マネージャー心得帖(成功と成長7つの原則)」(WAVE出版社)【これからのリーダーに贈るマネージメントの基軸・世界のDENSOで学んだ普遍的人材育成論】を参考にして頂きたいと存じます。
この著書の中で、“経営の7つの基軸”を次の様に挙げています。
- 人の可能性を具現化する。
- Pull Systemで人と組織の可能性を引き出す。
- 異質から多様性を生み出す。
- サムシンググレートとしての方針管理を実践する。
- 摂理に基づいて権限と責任の一致にこだわる。
- やり切る・積み上げる。
- 経営と現場はRespectとLinkの関係にする。
これら“7つの基軸”は、車の構造に例えるなら、
- 『人の可能性を具現化する』+『Pull Systemで人と組織の可能性を引き出す』+『異質から多様性を生み出す』が “エンジン”
- 『「サムシンググレート」としての方針管理を実践する』が “走行制御系システム”
- 『摂理に基づいて権限と責任の一致にこだわる』+『やり切る・積み上げる』が “2つのメインECU”
- 『経営と現場はRespectとLinkの関係にする』が “シャシー(ボディ)” です。
この“経営の7つの基軸”の一つとして“摂理として権限と責任の一致に拘る”を理解することができれば、人は、自らその能力を発揮し、結果を追求できるように成長していきます。