PDCAの3つの問題点と効果的なPDCAを回す方法とポイント
「PDCAサイクルはもう古い」という人がいます。
しかし、ツールを上手く融合し、有効活用すれば、十分成果を上げられます。PDCAが古いのではなく、正しく使えていないことが問題です。
PDCAを使う上での問題を整理し効果的なPDCAサイクルを回すための方法とポイントを紹介します。
<目次>
PDCAサイクルの3つの問題点
PDCAサイクルが回らない問題点と対応策
PDCAサイクル自体の問題点と対応策
時代の変化と共に浮かび上がる新たな問題点と対応策
成果を上げるために~“考える力”“やり切る力”“協力する力”を強化する
PDCAサイクルの3つの問題点
最近、巷では「PDCAはもう古いから新しい手法を導入しなければならない!」等の議論を時々耳にします。
しかし、PDCAサイクルはもう古いのでしょうか?仕事に生かすことはできないのでしょうか?私はそうは思いません。
私自身、色々な仕事の実践でPDCAサイクルを使って、仕事をして来ましたし、成果を実感して来た者の一人です。
ただし、色々な問題点も同時に感じて来ました。
そこで、冷静にPDCAサイクルの是非を考えてみたいと思います。
そうしないと、PDCAサイクルを回す私自身がPPPPに陥ってしまう(仕事の型としてのPDCAサイクルについてのPDCAを回さずに、おもちゃを取り替えるように新しい手法に飛び付くのは、PPPPになってしまう)と思うからです。
私は、3つの視点で評価する必要を感じます。
①PDCAサイクルが回らない問題点。
②PDCAサイクル自体の問題点。
③時代の変化と共に浮かび上がる新たな問題点。
これから順に考えたいと思います。
PDCAサイクルが回らない問題点と対応策
PDCAが上手く回らない問題点として色々考えられますが、P→D→C→Aの順にそれぞれの問題点を考えたいと思います。
Pの問題点:「正しいPが立てられない」
P・F・ドラッカーの有名な言葉に、「最も重大な過ちは、間違った答えを出すことではなく、間違った問いに答えることである」があります。
同様に、PDCAのPが間違ったら、それ以降の活動は意味が無くなってしまいます。
どうすれば、正しいPを立てることができるか・・・
それは、
①なぜなぜを繰り返し、物事の「本質」とか「真因」に基づくこと。
②そのために適切なツールを用いること(QCの7つ道具等)
③正しい優先順位を付けること(優先順位を間違わない)です。
Dの問題点:「Dが進まない」
この問題においては、
①Pの段階でDが進み易くする工夫がなされていないケースが考えられます。
その対策は、行動計画表をしっかり作ることです。
5W1H「いつ(When)、どこで(Where)、だれが(Who)、なぜ(Why)、どのように(How)」を意識して行動計画を「見える化」します。
②行動計画表を基に進捗状況のフォローをしないことです。
リーダーはフォローの為の「場」をセットし、メンバーを集めて行動計画のフォロー会を開催しなければなりません。
ポイントは“考える力” “やり切る力” “協力する力”を如何に発揮させるかでしょう。叱責する場ではないことが重要です。
この“考える力” “やり切る力” “協力する力”の養成をしながら如何にPを達成するかがポイントです。
Cの問題点:「Cができない」
この問題においては、Pの段階でCができる様工夫がなされていないケースが考えられます。その対策は、「何が正常か」をPの段階で明確化することです。そうしなければ「異常」が分かりません。そして異常が発生したら是正の行動を迅速に行います。
Aの問題点:「Aができない」
この問題においては、
①Cの結果を如何にまとめるかです。一つひとつのCの結果をまとめ、出来たこと・出来なかったことをまとめます。
そして、出来たこと・出来なかったことの要因を分析して、新たなPの土台とします。
②インタンジブルアセット(お金に換算されない資産、例えば人材・マニュアル・システム等)の向上を反映した新たなP(スパイラルアップしたP)をセットします。
前述の“考える力” “やり切る力” “協力する力”の養成はその為にあるのです。
PDCAサイクル自体の問題点と対応策
PDCAサイクル自体の問題点として、以下が考えられます。
①遅いスピード:事前に十分に検討し、関係者に根回しして、合意を取り付けるなどに手間取る。
②前例主義:どうしても前のやり方を踏襲し易く、新しい発想がでにくい。
③過剰品質:掛ける時間の過剰や品質の過剰を生み易い。(お客様がそこまでの品質を求めていないのに、手前味噌で過剰品質になってしまう)
④分析主義:分析に出にくい要因、人間的な側面が反映されにくい。
しかし、これらの問題点は、PDCAサイクルが元々統計的品質管理の概念であったことから必然的に生じると思います。
この問題点を是正する為、PDCAサイクルの型をある程度改良するにしても、余りやり過ぎると、良さが無くなってしまいます。
ですから、他の型(例えばOODAループ)との組み合わせ、融合を図ります。
その考え方については、以下の記事を参照ください。
時代の変化と共に浮かび上がる新たな問題点と対応策
システム開発における開発手法に「ウォーターフォール」があります。
これは歴史ある手法で、開発プロジェクトを時系列に
「要求定義」
「外部設計(概要設計)」
「内部設計(詳細設計)」
「開発(プログラミング)」
「テスト」
「運用」等
の作業工程にトップダウンで分割し、ガントチャートを活用してこれらの工程を一度終わらせる計画を立てて進捗管理をします。
原則として前工程が完了しないと次には進めません。
この手法は、ある意味でPDCAサイクルに似ています。
きちっと工程を区切って、次の工程へと進みますが、お客様の要求を100%仕様に落とし込むことはなかなか難しく、前工程に戻って進捗度を戻さざるを得ないことが頻発します。
そこで、アジャイル(俊敏)方式が生まれました。
反復(イテレーション)と呼ばれる短い開発単位を採用することで、リスクを最小限化します。
システム開発以外の仕事においても、お客様の要求が100%明確化できない様な場合は、トライ&エラーを繰り返していくやり方もあるでしょう。
この様に、PDCAサイクルの回し方も、時代の変化と共に変えて行く必要もあると思います。
成果を上げるために~“考える力” “やり切る力” “協力する力” を強化する
色々述べて来ましたが、結論として「PDCAサイクルを回すこと」が目的ではなく、「仕事の成果を上げること」が目的であることをもう一度確認することが大事であると思います。
上司にPDCAサイクルを回せと言われたから回したとか、PDCAサイクルをもっと速く回せと言われたからもっと速く回した、等の笑えない現象が発生してしまいます。
その問題の本質は、“考える力”が足りないか、考えることを止めてしまっているということでしょう。
マネージメントとして、そこに気付き、対策を施すことが重要です。
同様に、何故“やり切る力”が不足しているのか、“協力する力”を発揮できないのかを本質的に議論し、対策を施せば、その仕事に最適な型・手法、運営の仕方、人材の育て方が浮き彫りになり、必ず成果に結び付くと確信します。