OJTを4段階の育成ステップで進めるための方法とポイント
OJT(On-the-Job Training)は、仕事の実務遂行力を高めるためのトレーニングです。
仕事の経験を通じて、遂行力と必要な知見を習得させるものです。
OJTによる育成のステップは、やってみる(Show)、説明する(Tell)、やらせてみる(Do)、確認、追加指導(Check)の4段階で行っていきます。
OJTによる人材育成の方法と成功のコツを紹介します。
<目次>
OJTとは~4段階の育成ステップ
OJTによる人材育成のプロセス・手順
OJTを成功させるコツ
OJTの成果を生かすためにはローテーションを行う
OJTとは~4段階の育成ステップ
OJT(On-the-Job Training)は、元々USAのチャールズ・R・アレンが提唱した教育手法です。
彼は職業訓練施設における集団教育ではなく、職務現場における実地訓練を提唱しました。
これにより、職場への素早い人員補充が可能となり、急な増産対応ができる様になりました。
彼は、実地訓練の方法として、「4段階職業指導法」を開発しました。
①やってみる(Show)
②説明する(Tell)
③やらせてみる(Do)
④確認、追加指導(Check)
現在は、社内に無い知識や技術の付与や認定教育機関による指定研修の為のOff-JTと社内にある知識や技術を前提としたOJTを組み合わせて、更に自己啓発も含め、其々の良さを発揮させ、相乗効果を狙いとした人材育成プログラム・人材育成計画を策定し、早期に人を育てる事が重要になっています。
OJTは、「形式知化し難いもの」或いは「習熟を要するもの」の教育に適しています。
即ち、対応すべき状況が多様であったり、勘や経験による技能など、実際に体験する場を通じて習得する方が伝わり易い仕事に対して行われます。
しかし、一般的にOJTは、教育を行う側も受ける側も時間を要するので、できるだけOff-JTで身に付けられる事は身に付けた上でOJTを実施した方が効率が良いと考えます。(因みに、Off-JTに適する内容は、①知識習得等、経験・習熟を要しない。②判断基準と行動が明確化され、体系化されている。)
OJTを行う際の基本は、PDCAサイクルです。
P=OJTの計画を立てる
D=計画に基づいて仕事を経験させていく
C=定期的に、身に付いた能力、付いていない能力を確認する
A=課題解決への方策を考え、次の目標につなぐ と言うことです。
OJTによる人材育成のプロセス・手順
OJTを計画的に進める為、2~3年を目途とした「OJT計画書」を作成します。
OJT計画書に盛り込む内容
計画書に盛り込む内容は以下の通りです。
①OJT目標
期間終了後のあるべき姿
②習得すべき能力
目標と現状のギャップを明確化し、どう埋めるかを明確にする
③能力習得の為に取り組む業務
どの様な業務を通じて能力を習得するかを明確化する
④評価
OJT実施後の振り返り、対象者とOJT担当者の意識の差を明確化し、合意の上で、残された課題と対応策を立案する
⑤長期的目標
対象者とOJT担当者の合意の上で、長期的目標を立案する
等です。
OJT計画書作成のポイント
この「OJT計画書」を作成する上でのポイントは、
①「5W1H」が網羅されていること
②OJT対象者とOJT担当者が共通認識を持てること
③PDCAが回せる様に結果の振り返りと次のステップが理解できること
です。
この「OJT計画書」を基に、定期的な面談をし、進捗と成長を確認し合いながら、更にOJTを進め、能力を身に付けて来たら、次の目標をまた立てていくというOJTのPDCAを回します。
「OJT目標」は、5段階評価基準等で習得レベルができるだけ客観的になる様な工夫が必要です。
「習得すべき能力」は、場合によってはOff-JTや自己啓発から習得した方が効率的な場合があります。
この「OJT計画書」においては、「能力習得の為に取り組む業務」としてOff-JTや自己啓発も含まれて然るべきです。
仕事の内容によっては現場で学ぶことや、取引先に行くこと、他社への出向等範囲が広がることがあります。
私は「Pull system=場が人の能力をPullする」と考えますので、意図的に良い「場」をセットして人を育てる事が重要と考えます。
「評価」は「P(OJTの計画を立てる)」において、到達すべき能力のレベルが客観的で、実施事項が「5W1H」を網羅したものであれば大変やり易くなります。
また、対象者とOJT担当者の意識の差を明確化し、合意の上で評価することが重要です。
「長期的目標」はこの職場での経験・能力向上の先にある次のステップ(新しい職場へのローテーションを想定して、或いは同じ部署での昇級・昇格を想定して)の準備になる様な能力も含めます。
OJTを成功させるコツ
OJT計画書を策定する上でのコツやPDCAを回す上でのコツはこれまで述べて来ました。
しかし、その効果的な運用はOJT担当者の意識と実力に大いに関係します。
私の思う「OJT担当者」に求められる意識・能力は次の通りです。
①「人は可能性を具現化する!」というポジティブな意識を持つ。(性善説で人を観ること)
②チームの力を活用し、チームメンバーがお互いに協力したり、切磋琢磨したりする環境を作る。
③色々な「場」をセットして、OJT対象者の「学びたい」「学ばなければならない」状況を上手く作る。
④OJTは、一つひとつの業務を「やり切る」「積み上げる」という意識の下で成立することを理解する。
例えば「3ヶ月業務計画」等、業務スケジュールを3ヶ月単位に鳥瞰し、OJT対象者の担当する業務計画を見える化し、その進捗状況を把握します。
納期の無い仕事は無い訳ですから、其々の納期までに一定品質を確保した仕事をOJT対象者が出来る様支援し、成功体験を積み上げることによって成長させます。
3ヶ月計画表とは
例えばある年度の「4~6月業務計画表」は、A3(横書)1枚で作ります。
縦軸に業務内容(10項目程度)、横軸に3月の実績(又は実績予測)+4~6月の業務計画を列記します。
横軸の一番上の欄には、部会・役員会等の大きな会議体のスケジュールを入れ、その会議に上申する日程を踏まえ、逆算して業務計画(矢印で仕事の期間を示す)や担当者を明示します。(部会・役員会等へ上申する日程がそれに必要な業務をPullする形で仕事を設計する。)
OJT担当者は、この「4~6月業務計画表」にチェックポイントを定めますがそのコツは、「手遅れにならない日程でチェックする」ことです。
この表はスケジュール管理のみならず、部下一人ひとりのOJTに活用します。
毎月1回、原則月末に当月の業務進捗の評価をすると共に、次月から先3ヶ月分の業務計画表を作り続けます。
⑤OJTは大袈裟に言えば、部下の将来の仕事力を左右すると考えます。
皆さんも「あの上司に育てられた!」と感じる上司が一人二人居ると思いますが、その方とのOJT、或いは全人格的な交流の機会があったから「あの上司に育てられた!」と感じるに違いありません。
OJT担当者は、その役割・責任の重さをしっかり受け止め、全身全霊で部下の「人材育成」に取り組んで欲しいと思います。
OJTの成果を生かすためにはローテーションを行う
場が人をつくると考えると、良い場を良いタイミングで与えることが人材育成上大変重要なテーマになります。
ここで言う「場」とは、同じ職場における昇格(より責任の重い場)、ローテーション(社内の新しい仕事に一から挑戦する場)、出向(系列会社等、比較的規模の小さい組織の中で経営の全体像を把握する場)等色々あります。
OJTが真の意味で成功したかどうかは、OJT対象者がOJT担当者から離れて、自立して仕事をする、上記の様な新たな場において証明されます。
そのことをOJT担当者は常に意識する必要があると思います。
OJT担当者のみならず、部門全体の意識として、人を囲い込むのではなく、「場」が人をつくると考える、積極的に新しい事に挑戦させる風土が人材育成には不可欠であると思います。