自主研活動は、経営目標を実現するために、改革・改善を職場が主体的に進める母体です。そこでは、業務遂行力を高めるとともに、目的・目標を自ら実現する組織と、その組織をリードする人づくりができていきます。
自主研の考え方と進め方、成功のポイントを紹介します。
<目次>
自主研の起源
自主研とは
自主研活動が求められる背景
自主研活動の目的
自主研活動の進め方
改善の切り口
自主研の起源
自主研の起源は、昭和30年代、トヨタの工場の部課長が自主的に集まり、チームを組んでかんばん方式の改善を進めた「かんばん方式部課長自主研究会(略して自主研)」が起源と言われています。
その後、かんばん方式から様々な工場改善・ライン改善、さらにオフィス業務改善の取り組みの母体として広がっていきました。また、仕入先を巻き込んだ自主研も行われ、トヨタグループ全体へのトヨタ生産方式の浸透と改善文化づくりへ大きく貢献する活動となりました。
自主研は、方針管理と相まって、経営目標の実現に向けた職場の改革・改善を推進する活動へと展開されていきました。
自主研とは
“自主研活動”は、「部門長が中心となり、部門内の原則全員が自ら主体となって、仕事の改善を通じて職場・メンバーを成長させるあり方を研究し実践すること」です。
“自主”・・・自ら主体となり活動するから“自主”と称する。(活動を自発的にやると言う意味で使う“自主”ではない。活動は組織的に行うが、どう進めるかを主体的に考えることから由来する。)
“研究”・・・自部門に合った改善のあり方を自ら探求するから“研究”と称する。
自主研活動が求められる背景
経営と現場は、将に車の両輪です。色々な戦略の実践や新たに開発された商品価値も、現場が機能して初めて具現化されるし、顧客に届けることができます。また、現場の意見を反映した戦略や商品開発でなければ、そもそも戦略や商品開発自体が良いものにならない事は明らかです。この様に経営と現場はお互いに“Respect & Link”の関係で結ばれていることが重要と考えます。
「戦略の現場化」と「現場の戦略化」というセットの言葉を私は大切にしています。
「戦略の現場化」とは、会社の方針・計画を切れ目無く展開する【“理念”→“ビジョン”→“長・中期経営計画”→“年度計画(会社・部門毎)”→“個人目標・行動計画”への展開】と共に、各階層毎の異常を正常に戻すことです。(これらの活動全体を“方針管理”という)
「現場の戦略化」とは、上記“ビジョン”→“長・中期経営計画”→“年度計画(会社・部門毎)”の夫々に、現場の意見を反映することです。つまり経営と現場が“Respect & Link”の関係にあるとは、具体的に言えば「戦略の現場化」と「現場の戦略化」が実践されていると事と同義です。
実際には戦略立案や商品開発ばかりに注力する会社が散見されます。会社として組織的・恒常的に“現場力の向上”にも取り組むことが大切です。
“自主研活動”の意義は、これまで述べてきた意味において“現場力の向上”に会社経営の重要なテーマとして取り組むことです。
自主研活動の目的
“現場力の向上”とは、
①組織(チーム)力の向上、②個人能力の向上の2つに分解できます。
“自主研活動”は、“方針管理”の結果展開された“年度計画(会社・部門毎)”を達成する上で、その組織(チーム)の役割・計画を前提として、担当業務を遂行しながら如何に①組織(チーム)力の向上、②個人能力の向上を実現するかが狙いです。
如何に考える力のある組織(チーム)を作るか、如何に考える力のある人材を育てるかが狙いです。
自主研活動の進め方
理念の明確化
まず自主研活動の“理念”を明確にします。私は実際に活動を始めるに当たって、次の様な理念を策定し、全ての活動の指針としましたのでご紹介します。
【自主研活動理念】
・考える
・そして発言する
・そして知恵を出し合う
・それを喜びとする
・それが出来たとき想像を超える改善が生まれる
トップコミットメント
“自主研活動”の展開は、会社としての活動ですから、トップのコミットメントが不可欠です。
事務局は「人づくりや改善の定着は10年の計。じっくり、しつこくやり続ける」こと、
「チームは原則全ての部門を対象に活動する(例外は認める)」こと、
「本社部門に事務局(社内コンサルタント)を置き、活動をリードする」こと、
「定期的に経営者の現場巡回(指導会)を行うこと」等を承認してもらう。
自主研ボードの活用
“自主研ボード”を職場に掲げる。
つまり「方針管理」と「改善」が整合性を持って実施されるための仕組みです。
以下の“図表”は「方針管理」と「改善」を整合させるためのボードのイメージです。
この枠組みを基本として、夫々の職場に合ったボードを立ち上げます。
最も重要なのは、「職場能力の向上計画」です。
会社から求められる役割の変化を先取りして、自部門の能力を如何に計画的に成長させるかがこのボードで分かる様にしましょう。(3年間の成長のプロセスを明確化すると長期的展望が分かり易くなる)
また、職場能力の結果指標をどの様に定めるかも重要です。
出来るだけ定量的に定め、PDCAサイクルが回る様に工夫しましょう。以下を参考にしてください。
活動の進め方
活動は以下のステップで行います。
(1)チーム作り(小集団活動が基本・・・リーダー1人とメンバー10~15人位)
(2)自主研ボードの立ち上げ
(3)定例ミーティングの開催(毎日15分の朝会・週1回1時間のミーティング等色々)
(4)部門長との定例ミーティングの開催(月1回1時間等色々)
(5)経営者の現場巡回(指導会)実施(3ヶ月に1回程度)
この現場巡回は、経営者が現地・現物・現実を知る機会としても大変重要です。
例
n年 4月:年間活動目標の設定、
n年 7月:中間フォロー、
n年10月:中間フォロー、
n+1年 1月:中間フォロー、
n+1年 3月:年間活動の成果検証・反省・次年度への展開等
(6)優秀な自主研活動に対し、年間表彰をするケースもある。
※1年が1サイクルで10年は続ける。
自主研活動を成功させるためのポイント
①全員参加・・・職場毎に独立した活動ではなく、部門長はじめ経営者まで関わる者全員で「方針・業務目標・施策・結果」を共有することにより、整合の取れた活動を行う仕組みを作る。
②業務目標+成長目標・・・業務目標と施策だけを掲げ、必要な能力の習得を個人に委ねるのではなく、施策遂行能力の向上計画を職場で立案し、必要な施策を実践する。
「業務目標」と合わせて「成長目標(職場・個人)」を掲げ、より高い業務目標を達成するために“成長をつづける組織”を作る。
③仕事の管理・・・業務の指示と結果報告のみで管理するのではなく、計画から実行のプロセス段階を随時確認すること、異常の検知と予防処置を行うこと、施策の結果を検証すること、等を実践し、仕事の進め方を身に付ける。
④方針管理+業務改善・・・日々の仕事の中で、方針管理と業務改善が融合した職場を作る。
更に、継続して成果を出している職場の知恵や行動特性(コンピテンシー)を広めることにより、会社全体が強くなる。
改善の切り口
まず“ムダ取り改善”に注力します。
この“ムダ取り改善”には、組織と顧客のムダ取りがあります。
①組織のムダ取り
お客様にとっても組織(職場)にとっても価値の無い仕事(時間)をあぶり出し削減する。(換言すれば、非正味の時間を取り除くことです)
②顧客のムダ取り
お客様にとって価値の無い仕事(時間)で組織にとって必要なムダをあぶり出し削減する。(換言すれば、正味の時間ではあるけれど、そもそも顧客が必要としていない可能性のある仕事(時間)を検討のまな板に乗せて削減できないかを検討することです)
仕事の内容・プロセス(やり方)・一人ひとりの負荷状況等を“見える化”して、負荷のバラツキを是正し、助け合いの出来る職場に変える。
その為には、一人ひとりが多能工化する(何でも出来る能力を身に付ける)必要がある。
“なぜなぜ”を繰り返し、問題の本質を追及し改善する。
当該職場の前工程やシステム等に問題の本質がある場合は、部門長の協力を得て、前工程やシステムの改善に向け提案する。
QC(クオリティ・コントロール)の基本知識が必要となる場合があるので勉強する。
チーム毎の交流を推進し、良い点・良いアイデアはどんどん吸収し合う。