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ミッション・ビジョン・バリューの作り方~経営者が持つべき視点とアプローチ

企業経営におけるミッション・ビジョン・バリューづくりの原理原則のイメージ写真です。

理念と時代に即したミッション・ビジョン・バリューの重要性を知る

人や動物、植物といった生物や自然界において、すべての個体は役割を持ちます。
サムシンググレイトの存在によって、必然的に調和が取られています。

企業という世界を人為的に作り出すとき、取り巻く周りとの調和を取る必要があります。
経営者は、ミッション・ビジョン・バリューを使って、その調和の基盤を作り出す役割を持ちます。
ミッション・ビジョン・バリューのない企業は存続できません。
どのようなミッション・ビジョン・バリューを掲げるかが企業の在り方を左右するでしょう。

企業が存在する理由、どのような役割を担い、どのような貢献をするのかを策定します。
ここでは、企業経営における原理原則を説明します。

*1:サムシンググレイトとは
「人智を超える何か」「偉大なる何者か」「あらゆる生命の大根源」などさまざまな表現がある。
世界や宇宙規模での生態系を考えるとき、人間を含めた生物や植物の存在には、人の意思では及ばない域がある。サムシンググレイトの目に見えない存在により、すべての調和が保たれている。

<目次>
企業経営のマネジメントに必要な「忍耐」「勇気」「知恵」
・経営者の役割
経営は広い視野で物事の本質を見る
ミッション・ビジョン・バリューを高めるためのアプローチ
・ベンチマークのアプローチ
・絶対的な価値を追求するアプローチ
・そもそも論で原点を見つめる
「外注は自分の鏡」としてマネジメント力向上に活かす

企業経営のマネジメントに必要な「忍耐」「勇気」「知恵」

人智を超える何かのことをサムシンググレイトといいます。
エコシステム(生態系)で考えてみると分かりやすいかもしれません。
エコシステムは、さまざまな生物や植物などによって成り立っています。

それぞれの個体は自分の生命を維持しつつ、生態系全体の中で何らかの役割を担っています。
それにより、個々の存在する世界の調和が取れている
のです。
そこには、調和を取ろうとする何か、いわば、サムシンググレイトとも言える意志が存在しているのではないでしょうか。

個体の一つひとつに与えられる役割は平等ではありません。
厳しい環境下で生きることを余儀なくされる生物もいれば、食物連鎖の頂点に立って悠々と生きる種も存在します。これは、偶然ではありません。
それぞれが全体の中での自分の役割を全うするために、必然的に「そうでなくてはならない」のです。

経営者の役割

企業のマネジメントとは、この成り立ちを具現化させ、企業経営における施策に落とし込むことです。
一人ひとり異なる人の行動をまとめ、全体との整合性を持たせていく必要があります。
方針管理として、企業を「摂理に合った方向=企業理念の実現」に導くものとなります。

「神よ 願わくばわたしに、
変えることのできない物事を受け入れる落ち着きと、
変えることのできる物事を変える勇気と、
その違いを常に見分ける知恵とをさずけたまえ」

アメリカの神学者ラインホルド・ニーバーが説いた「ニーバーの祈り」です。
「忍耐」と「勇気」と「知恵」を求める切実な願いが込められています。
この3つの要素は、人間が生きていく上で必要不可欠なものです。

経営者が会社を経営していく上でとても重要なものでもあります。
なぜなら、経営者が企業の「使命・めざす姿・価値観」をしっかりと見据え、具体的に描き出し、成長・発展へと導くためには、「変えることのできない物事を受け入れ」て、「変えることのできる物事を変え」なくてはならないからです。

目の前にあることが「改善の対象」なのか「与えられた環境」なのかをきちんと見極めなければ、努力が徒労に終わるかもしれません。与えられた環境は受け入れ、改善の対象だけを変える勇気を持たなくてはならないのです。

どんなに優れた能力を備えていても、時代がその能力を必要としていないことがあります。

ニーバーの言葉を借りれば「変えることのできない物事」であり、改善で言えば「与えられた環境」です。歴史に名を残した人物たちが活躍できたのは、それぞれの功績が、その時代と与えられた環境にマッチしていたからなのです。

何か大きなことを成し遂げたいと考えるとき、今、その大きな変革が求められているのかを見極め、変えてはならないものを変えないことも必要です。逆に、時代が変革を求めているにも関わらず、変えるべきものを変える勇気のない人は、その時代のトップに立つべきではないのかもしれません。

激しく変化する企業環境、複雑に絡み合ったステークホルダーとの関係の中で、その会社にとって正しいミッション・ビジョン・バリューを描くことはとても難しいことです。何を変えてはいけないか、何は変えなければならないかを理解し、判断できる会社だけが、社会からの尊敬・信頼を失わず、ゴーイングコンサーン(*2)できるのです。

世の中には、変えられないことを変えようとする人、逆に、変えるべきものを変えようとしない人がいます。「ニーバーの祈り」を胸に刻み、変えられないものを受け入れる「忍耐」と、変えるべきものを変える「勇気」と、目の前のものがどちらなのかを見極める「知恵」を、求め続けていきましょう。

*2:ゴーイングコンサーンとは
企業の永続を前提とする考え方のこと。人の命には限りがあるが、企業は継承により永続が可能。
経営の計画、遂行は継続することを前提にして進められる。存続の可能性を測る会計上の用語でもある。

経営は広い視野で物事の本質を見る

少林寺拳法の教えのひとつに「八方目」があります。
少林寺拳法は、もともと護身術ですから、何よりも自分の身を守ることに重きを置いています。
そのため「敵と対峙する時には八方目で構えよ」ということを教えられるのです。

人間の目は顔の前面にありますから、前しか見えないと思ってしまいがちです。
しかし、実はその視野は意外に広く、両目を合わせれば左右180度見ることができるのだそうです。

ところが、どこか一点に視線を集中してしまうと、視野はとたんに狭くなってしまいます。
本来見えるはずの部分も見えなくなってしまうのです。

少林寺拳法の「八方目」の教えは、「どこか一点への視点集中ではなく、もともと180度視野に入っていることを意識して、全体を見るようにしなさい」ということです。視野全体にあるすべての存在を認識する程度に見ていれば、どこかに動きや変化があればすぐに気付くことができるのです。

この「八方目」の考え方は、経営者にとっても重要だと思います。
経営者が行うマネジメントとは、あらゆる情報に目を通し、さまざまな事象に配慮していかなければならないものだからです。

自分の興味のあること、自己の目先の利益、そんな事にばかり神経を集中することなく、あらゆるところに目を向け、物事の本質を見極めることが大切です。

そういう意味では、「八方目」よりもさらに増やして、「十方目」といえるかもしれません。
180度だけではなく、経営者にとって欠かせない「過去」と「未来」を加えて見ていくのです。

経営者は、常に「八方目」あるいは「十方目」を意識して、なるべく視野を広く持つように心がけましょう。どこか一点や興味の向くことだけに集中して、他のものを見落としてしまわないようにしましょう。
なるべく冷静に、平常心であらゆる物事を見ていくことが大切です。

会社にとって正しいミッション・ビジョン・バリューとはどのようなものか?
自分たちが選ぶべき道、とるべき手段は何か?
正しい決定は何か? 

これらの点を客観的に見ていくようにしましょう。

これが習慣になると、いつの間にか視野は広くなり、見えないはずのものが見えるようになっているものなのです。

ミッション・ビジョン・バリューを高めるためのアプローチ

企業が「使命・めざす姿・価値観」を目指して成長・発展へと向かうためは、成長や発展に資する価値が必要です。ですから、どうすれば価値が高まるのかを考えておく必要があります。企業の価値を高める方法として「ベンチマーク」「絶対的な価値の追求」という、2種類のアプローチがあります。

ベンチマークのアプローチ

「ベンチマーク」は、ライバル企業など他社と比較しながら自分たちの価値を高めていく方法です。
このアプローチは、たとえば、これまでの自分たちのやり方を見直し、大きな変革を通して企業価値を高めようとしているときなどに効果的です。

人間は誰しも今までやってきた方法を無意識に選んでしまうものです。
大きな変革には痛みを伴うことも少なくありません。
痛みを伴う変革が、自分たちにとって本当にメリットがあるのか半信半疑の人も少なくないでしょう。

それでも変革していく必要があるのだということを理解するために、何かベンチマークとなる存在が必要なのです。たとえば「今成功しているあの企業はこのやり方だ」といった成功例を示すことで理解を得やすくなります。

これにより、従業員の心をひとつにまとめることもできるでしょう。
いわば、他社との比較の中から見えてくる価値であり「相対的な価値」を活用する方法です。

絶対的な価値を追求するアプローチ

「絶対的な価値の追求」は、企業の存在意義など理念に立ち返り、理想や使命・めざす姿・価値観を追求するアプローチです。この方法を行うためには、自分たちが目指す方向性に対する確信、揺らぐことのない哲学が必要になります。

経営者は、できるだけ後者の「絶対的な価値」を意識しましょう。
なぜなら、「相対的な価値」は、技術革新などの環境変化に伴い、ある日突然意味を成さなくなる可能性があるからです。「理念」に立ち返り、信念や哲学に基づく「絶対的な価値」を追求すれば、価値が揺らぐことはありません。

難しいのは、その信念や哲学が絶対的に正しいものであるかどうかです。
間違った信念や哲学に基づいて「絶対的価値」を追求してしまうと、会社全体を危機に陥れることになりかねません。常に「本当に大丈夫だろうか?」と自問自答していくことが大切です。

そもそも論で原点を見つめる

経営者は、「そもそも論」で原点を見つめましょう。

そもそもなぜこの仕事に取り組んでいるのか?
そもそもこの会社の存在意義は何なのか?
そもそも人は何のために生まれてくるのか?というようなところまで行き着くかもしれません。
しかし、経営者はそうやって突き詰めて考えていくことが必要です。

先行き不透明なこれからの時代、正解を出すのはとても難しいことかもしれません。
だからこそ、真面目に、全力で「そもそも」について考え抜くことが重要なのです。

「外注は自分の鏡」としてマネジメント力向上に活かす

何らかの目標を達成するために、外部の英知を有効に活用することは、経営においてとても大切なことです。

たとえば製造業なら、部品メーカーにさまざまな部品の製造を外注して、それらをまとめてひとつの製品へと仕上げます。そのような場合に、外注した製品に問題があるとしたら、発注する側の自分たちに何らかの問題があったと考えるべきです。

「外注は自分の鏡だ」と考えていきましょう。

製造業では、昔から外部の力を活用してきましたが、現在は外部の力を借りる意味も範囲も多岐に亘っています。

たとえば、経営の中枢とも言えるミッション・ビジョン・バリューの策定などでも、外部のコンサルタントに相談するケースが少なくありません。

そのような場合でも、基本的には「外注は自分の鏡だ」と考えるべきです。
製造業における部品づくりであれば、設計図があって「何をつくるべきか」が明確に分かっています。
しかし、コンサルタントの場合は設計図がありません。ですから、依頼する側ができる限り情報を整理して依頼しない限り、求める答えは出てこないのです。

コンサルタントを活用する際には、「どうありたいのか」「現在の状況はどうなのか」などさまざま情報を提供しましょう。そのとき、必ず「こうしたいのだがどうだろう?」という自らの仮説を持つことを心がけてください。

「ミッション・ビジョン・バリュー策定」にあたり外部コンサルタントに協力を依頼するなら、ある程度のミッション・ビジョン・バリューの骨格は経営者および経営スタッフで考えます。それを外部からの目、専門家としてコンサルタントの目でチェックしてもらうようにしましょう。

ミッション・ビジョン・バリューの元となるアイデアや骨格がない状態で、コンサルタントに「我社のミッション・ビジョン・バリューをつくってください」とか、「我社の赤字転落の要因を分析してください」などの依頼をしても、正確な分析は不可能です。求めるような答えも得られないでしょう。

コンサルタントはあくまで外部の人間・会社です。
内部の人間以上に内部のことを知っているはずがありません。
この認識をきちんともって、外部の英知を使いこなしていきましょう。

経営者自身が「自らの会社のことは自らが考え抜く」という姿勢を持つことがもっとも大切なことなのです。その結果出てきた「仮説」を外部コンサルタントなどにチェックしてもらい、より良いものにしていくことが大切です。

時間がない時など、コンサルタントなど外部の力を活用して、同時並行的に仕事をこなせるというメリットがあります。このような使い方も有効かもしれません。

いずれにしても、より価値のある成果を求めるなら、「外注は自分の鏡」という意識で、きちんと考え抜き、情報を集め仮説を立てるなど準備することを心がけましょう。

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