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  1. 人材育成

部下の育成で実践すべきポイント~部下を育てるための3つの方法

人材育成のPull化:リーダーとして部下に伝える力を鍛えるのイメージ写真です。

自ら考え行動できる部下を育成する

自ら考え行動できる部下を育成するためには、場をつくり、知識や経験、成功要因を概念化して応用できる形で伝えること、ものごとの本質を伝えて部下の気付きと理解を引き出し考えさせること、約束を守る要件を与えて守る方法を考えさせることです。
自ら考えて行動する部下を育成する3つの方法とポイントを紹介します。

<目次>
部下の育成の場をつくる
【育成ポイント1】知識と経験を「概念化」して応用できる形で伝える
・成功体験の伝え方
 ┗ 要因を分解
 ┗ 分析に必要なメタ認知能力
【育成ポイント2】部下に本質を伝えて答えは自ら考えさせる
・気付かせ、理解させるために
・相手に合わせ、本質を変えずに伝える
【育成ポイント3】部下に「約束を守るための要件」を与えて約束を守る方法を考えさせる
・約束が守られない原因はPull式で探る
・約束を守るための要件を確認する
 ┗ 約束ごとは明確か
 ┗ 約束の守り方(方法・コツ)を提供しているか
 ┗ 部下が約束を守れる状況にあるか

部下の育成の場をつくる

「Pull System」の考え方は、経営や業務で取り入れられています。

これは、企業にとって重要なテーマとなる「人づくり」にも有効です。
なぜなら、「Pull System」をベースにした人材育成は、
上から目線で目標を押し付けるのではなく、一人ひとりが自ら考え、動くための考え方
だからです。

インターネットの普及に伴い、記憶は今までほど重要ではなくなっています。
集めた情報などをいかに使うかを「考える力」が重要視されています。

この「考える力」を養う上で重要なのが、「Pull System」の考え方に基づく「場の提供」です。
人間は適切な場(機会)が与えられるとき、自ら考え、ベストを尽くす過程の中で成長します。

部下に仕事を押し付けてはいけません。
自分で何をすべきかを考えさせ、そのやり方を模索させることで可能性を引き出していきましょう。

まさしく、「Pull System」的な人材育成と言えます。

一人ひとりの能力が向上すれば、必然的に企業の業績は上向きになっていくはずです。

育成ポイント1:知識と経験を「概念化」して応用できる形で伝える

「ナレッジマネジメント」というマネジメント手法があります。

個人の知識や経験を「見える化」することで、知識の共有化を実現します。
それは、作業の効率化や新発見につながっていくでしょう。
「個人の知識を組織的に共有し、より高次の知識を生み出す」ことを目指すものです。

自分自身の成功体験と同じく、他の人の成功体験も、社員の知識になり得ます。
企業にとって、活用すべき貴重な財産です。

しかし、伝えられるものが上司の単なる武勇伝では、部下に役立つ知識にはなりません。
部下が応用できる形で伝えることによって、その知識や経験が人材育成につながるのです。
応用できる形とは、「概念化」されたものです。概念化は、成功のためのロジックです。
すでに誰かが成功した手法を応用できれば、同じように成功する可能性が高くなるでしょう。

何をどのように伝えれば、個人的な成功体験を「概念化」して伝承し、共有することができるのでしょうか。

成功体験の概念化

成功体験を誰かに伝える場合には、経験を概念化して伝えることを意識しましょう。
伝える前に、まず、自分の成功体験をきちんと整理するために、成功の要因を分解します。
そして、どのように利用すればそれが次の成功につながるかを十分に考慮することが大切です。
成功体験の押し付けや成功体験に基づく先入観は、育成を阻むリスクがあるので気を付けましょう。

成功要因を分解

成功の要因を分解して、特殊要因と成功要因を把握します。

・特殊要因とは、その状況だから成功したという要因
・成功要因とは、原理・原則に合致している要因

その上で、原理・原則に合致している成功要因だけを伝えていくのです。

経験も知識も一人ひとり異なりますから、個人的な経験はそのままでは伝わりません。
経験を概念化し、ロジックを整えておかなければ、決して伝わらないのです。

たとえば、営業職に伝えるべきことは「一人ひとりの営業担当がどうやって成功したか」ではありません。
良い成績を残す営業担当者に共通するポイント、「優れた営業担当者の考え方」を抽出して伝えましょう。

野中郁次郎一橋大学名誉教授が提唱した「SECIモデル」では、

個人の行動から抽出した膨大なデータを解析すれば、何らかの共通する特性やパターンという情報が見えてくるはず

と説かれています。

その共通項を取り入れ、身に付けた人は「優れた営業担当」になる可能性が高くなるのです。

分析に必要なメタ認知能力

この分析を行うためには、「メタ認知能力」が必要です。
「メタ認知能力」とは、
「自分の思考や行動そのものを客観的に対象化して認識する能力」のことです。

管理者は自分の成功体験を部下などに伝える場合、具体的なケーススタディやハウツーだけではなく、「原理・原則」「概念」「考え方」などのメタファーに変換して伝えるように心がけましょう。
 
成功体験の内容に限らず、誰かに何かを伝えるときに伝えるべきは「概念」や「考え方」です。
これはOJTも同じです。

OJTの根本には「信なくば立たず」という考え方があります。
お互いの信頼関係なくしてOJTは効果がないということです。

信頼関係が構築され「考え方」や「概念」が伝われば、もう「自分」は必要なくなります。
OJTの究極の目的とは、成功体験でも失敗体験でも、伝えるべき「考え方」や「概念」をすべて伝えて「自分がいなくなっても成立するようにすること」です。

自分の経験や考え、あらゆる「知」を「概念化」してメタファーとして伝承したあとの、具体的なやり方については、それぞれ伝えられた側が考えれば良いのです。
それが企業の集合知となり、競争に勝ち抜き、生き残るための切り札となるはずです。

つまり、「メタファーの伝承」は、部下の未来の成功を“Pull”する種になる、と言えるでしょう。

育成ポイント2:部下に「本質」を伝えて答えは自ら考えさせる

「Pull System」では、伝えたいことがきちんと伝わったかどうかは、伝える側に責任があると考えます。

伝える内容によっては、正確に伝えることが難しいこともあるでしょう。
しかし、たとえ難しくても、部下を育てるためには伝えなくてはなりません。

気付かせ、理解させるために

伝え、理解させることが難しいときのヒントとして、お釈迦様の逸話をご紹介しましょう。

ある時、大切な子どもを亡くした女性が「私の赤ちゃんを生き返らせて下さい」と、泣きながらお釈迦様に訴えました。

お釈迦様は、「今までに一度も死者を出したことの無い家からカラシの種をもらってきたら、その子が生き返る薬を作ってあげよう」と返しました。

女性は、必死になって家々を回りましたが、死人を出したことのない家など一軒もありませんでした。

この女性は、この経験を通じて悟ります。
「誰もが愛するものを喪った悲しみを味わっている。生きとし生けるものは死を免れることはできない」

誰でも、愛する者を失えば悲しく、できるものなら生き返ってほしいと思うでしょう。
しかし、生き返ることは不可能なのです。
「誰もが愛する人を喪っていて、それを静かに受け入れている」
お釈迦様は、この事実に気付かせ、理解させようとしたのです。

お釈迦様の「その子が生き返る薬を作ってあげよう」という言葉は、客観的に見れば「嘘」でしょう。
しかし、悲しみに心を閉ざしている人に難しい話をしても受け入れられるものではありません。
このように、たとえ嘘を付いてでも、自分で気付けるように仕向けることが必要な場合もあるのです。

この話は人に伝えるべきことを伝える際に、最良の言葉を選んだひとつの例と言えます。
いわゆる「嘘も方便」です。
仏教用語としての「方便」は、「悟りへ近づく方法、あるいは悟りに近づかせる方法」を指します。
人材育成においても、「嘘も方便」はとても重要です。

相手に合わせ、本質を変えずに伝える

情報を発信する側となる上司は、その責任を果たすために把握すべきことがあります。
受け取る側である部下の能力、レベル、置かれた状況などを見極める形に変換して伝えましょう。

前述のお釈迦様の逸話の中の本質は、「どの家にも生老病死というものはある」ということです。
その本質を伝えるため、彼女が心の底から納得し、理解できるように、お釈迦様はわざわざ女性に「生老病死のない家」を探させたのです。

できるだけ相手に合わせて、相手が心の底から納得できるように、「本質」を伝えていきましょう。
まずは、伝える側として伝えたいことの「本質」を理解することから始めてみてください。

育成ポイント3:部下に「約束を守るための要件」を与えて約束を守る方法を考えさせる

もし、あなたが部下を持つとき、たとえば目標など、部下とさまざまな約束をするでしょう。
この約束は、経営の方針管理に基づいたもので、約束が守られなければ、あなた自身が責任を負うことになります。しかし、ときに約束が守られないことがあります。
そんな時、上司であるあなたはどうすべきなのでしょうか?

約束が守られない原因はPull式で探る

まず、どうして約束が守られなかったのか、ということを考えます。
その時に、「この人は約束が守れない人なのだ」という烙印を押してしまうことは簡単です。

しかし、それでは人材育成にはつながっていきません。
「部下は約束を守りたかったはずだ」という「性善説」に立ちましょう。
その上で、自分が部下に対して「約束を守れるようにセットしていたかどうか」を考えるべきです。

約束を守るための要件を確認する

約束を守れるようにするためには3つの要件があります。

「約束ごとが明確か」
「約束の守り方(方法・コツ)を教えてあるか」
「部下が約束を守れる状況にあるか」

もし、部下が約束を守れなかったなら、自分がこの要件をきちんと与えていたかを振り返りましょう。

約束ごとは明確か

一つ目は、部下ときちんと「何を・いつまでに」といった具体的な約束をしたかどうかという問題です。
物事を進める前に定義を明確にしておくことはとても重要です。

たとえば、目標を設定する場合にも、きちんと数字や納期を決めておかなければなりません。
「○○を目指す」「○○を検討する」という曖昧なものではいけないのです。

情報とは受け取る側ではなく、伝える側に責任があります。
取り組む前に、部下にきちんと伝え、それを相手が理解したかどうかを確認すべきでしょう。

約束の守り方(方法・コツ)を提供しているか

二つ目は、「部下が約束を守れる力があるかどうかを見極められていたか」という問題です。
守る力に不安があれば、どうやれば約束を守れるかという、その方法やコツの指導が必要になります。

たとえば、「目標を達成するためには必達目標よりも上の希望目標を目指した方が良い」とアドバイスを送るのも有効でしょう。そうやって、部下が約束を守れるように、手立てを尽くしたかどうかを考えましょう。

部下が約束を守れる状況にあるか

三つ目は、「部下が約束を守れる状況にあるか」です。上司として、不可欠な配慮となります。
仕事の量や忙しさなどはもちろんのこと、プライベートにまで配慮した方が良い場合もあるでしょう。
いずれにしても、部下が約束を守れなければ、管理者の仕事は成立しません。

これらの「約束を守らせる要件」を確認することなく、約束を部下に強要してはいけません。
ただ、闇雲な命令で強要するのではなく、まずは自分側を振り返りましょう。

約束を守らせるにはどうすれば良いか。
部下が約束を守るための3つの要件をきちんと与えるのは管理者の仕事なのです。

一つひとつ配慮を積み重ねることで、約束は守られ、目標が達成されて企業が成長します。
また、部下が管理者になったときにも配慮がなされるようになるでしょう。
そのように良い循環(Pullsystemの循環)が生まれることも、企業の成長につながるでしょう。

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