中間管理職・上級管理職・執行役員・次の経営者のための基幹人材養成研修・講演・コンサルティングなら、研修ソーシングへ
  1. 無料講座

ミッション・ビジョン・バリューとは~作り方のヒントと組み込む仕組み

経営のミッション・ビジョン・バリューづくりのための視点とヒントのイメージ写真です。

適切な視点と分析で、企業の永続につながるミッション・ビジョン・バリューをつくる

経営者の掲げるミッション・ビジョン・バリューは、すべてのステークホルダーに影響を与えるものです。ミッション・ビジョン・バリューとは、企業の「使命・めざす姿・価値観」とも言い換えられます。自社を取り巻く環境を踏まえ形のない「使命・めざす姿・価値観」を見える形にするのは簡単ではありません。

使命・めざす姿・価値観」を考える際には、「企業のDNA」「環境」「強み」の3つの要素を分析してヒントを得ましょう。企業を取り巻く環境分析においては、時間と空間から考えていく複眼的な視野も必要です。

決して永遠でない経営者としての自分を認識し、「使命感」と「役割意識」を持ってミッション・ビジョン・バリューを考えていきましょう。

<目次>
経営におけるミッション・ビジョン・バリューとは
企業マネジメントの「使命・めざす姿・価値観」を見出す3つのヒント
・「企業DNA」からのヒント
・「環境分析」からのヒント
・「企業の強み」からのヒント
・ミッション・ビジョン・バリューの策定と目的
企業継続のために経営者が持つべき「複眼システム」
・複眼システムの2つの視点
・複眼システムの空間と時間
有限を無限に換える使命感を持ってマネジメントする

経営におけるミッション・ビジョン・バリューとは

企業の方針管理の最上位に「理念」があります。
その次にくるのが「ミッション・ビジョン・バリュー」です。

「理念」とは、企業活動を通して社会にどのように貢献していくかという企業の存在理由について述べられます。長く続いている老舗企業などの場合、理念は創業の精神という場合も多く、時代を経ても変わることなく受け継がれます。

これに対し、「ミッション・ビジョン・バリュー」は時代と共に変わらなくてはなりません。
時代を経ても変わらない理念に対し、ミッション・ビジョン・バリューはその時々の時代を投影しながら、数年後、あるいは10年後くらいの具体的な「使命・めざす姿・価値観」を描くものです。つまり、ミッション・ビジョン・バリューは理念に基づいて現在の経営者の「想い」を「見える化」したものと言えるでしょう。

従業員一人ひとりに経営者のミッション・ビジョン・バリューが浸透し、全員が一丸となってその実現を目指すことで、企業は継続的な成長・発展に向かっていくのです。ミッション・ビジョン・バリューとは、ゴーイングコンサーン(*2)である企業がその活動を継続し、成長・発展する上で欠かせないもののひとつなのです。

従業員の力をひとつにまとめて大きな力へと変えるために、経営者はミッション・ビジョン・バリューをしっかりと策定しなくてはなりません。

「DNAを再確認する」「環境分析を行う」「強みを分析する」という3つによって、企業の今後の方向性や「使命・めざす姿・価値観」が見えてきます。そして、そこに経営者自身の「こうなりたい」あるいは「こうしたい」という想いを乗せることで、ミッション・ビジョン・バリューが立ち現れてくるのです。

このミッション・ビジョン・バリューを策定するまでが、経営者にとっての最初のステップです。

*2:ゴーイングコンサーンとは
企業の永続を前提とする考え方のこと。人の命には限りがあるが、企業は継承により永続が可能。
経営の計画、遂行は継続することを前提にして進められる。存続の可能性を測る会計上の用語でもある。

企業マネジメントの「使命・めざす姿・価値観」を見出す3つのヒント

自らが率いる企業の「使命・めざす姿・価値観」を考え、ミッション・ビジョン・バリューとして社内外に示すことが経営者としての大きな仕事のひとつ。
「使命・めざす姿・価値観」とは、それぞれの企業が理想とする未来の姿です。
形のあるものではないため、そう簡単に見えてくるものではありません。

ミッション・ビジョン・バリューを考えるとき、何を礎にして考えたらよいのかと迷うことも多いと思います。
「使命・めざす姿・価値観」を考える際には、「DNA」「環境」「強み」の3つの要素が重要となります。
これらを分析することによって、ミッション・ビジョン・バリュー策定のヒントを得ることができるでしょう。

「企業DNA」からのヒント

企業の未来の理想像ともいえる「使命・めざす姿・価値観」をしっかりと見極めるためには、はじめに企業の理念、あるいは設立の趣旨に立ち返りましょう。
まずは、理念として掲げられている「DNA」を再確認するのです。

自分たちの会社が「何のためにあるのか」
自分たちの会社は「どのように社会に役立ちたいのか」
自分たちの会社の「使命は何なのか」

原点を見直すことが大切です。
なぜなら、企業には生まれた理由があるからです。
変化のときにこそ原点に返るべきです。
理念に明記された創業者の想いは、さまざまな形で従業員たちに影響を与え、現在まで受け継がれているはずです。それこそが会社の「DNA」であり、そこには「使命・めざす姿・価値観」へとつながるヒントがあるのです。

「環境分析」からのヒント

次に、創業から現在、そして未来への「環境」の変化について考えます。
「環境分析」とは、時間と空間を意識して、地球という環境の中にある自社を分析します。
未来において自分たちを取り巻く環境がどう変化しているかを読み解いていくことです。

企業というのは環境の変化に応じてさまざまに形を変えて生き残りを図ります。
DNAはそう簡単に変化しませんが、行動や価値観、パラダイムなどは、その時々の環境に応じて柔軟に変化します。

経営とは、「いかに環境に適応するか」とも言い換えられるでしょう。
会社が長期にわたって生き残るために必要なのは「強さ」や「賢さ」ではなく、「柔軟性」なのです。従って、変化の変遷や今後の予測に着目すれば、会社がどのような価値観で自らを変化させてきたか、あるいは変化させるべきかといったことが見えてきます。この環境分析も、未来の「使命・めざす姿・価値観」を描く際のヒントとなるはずです。

「企業の強み」からのヒント

最後に「強み分析」です。会社の「強み」を生かすのが経営です。
P・F・ドラッカー氏は、

「会社の強みに焦点を当てて経営することが成功への近道である」

と語っています。

「強み分析」とは、必ずしも財務諸表などで表現されるタンジブルアセット(*3)とは限りません。
技術、人材、仕組み、ノウハウ、風土など、時間をかけてコツコツと積み上げたインタンジブルアセット(*4)でもあります。これらをきちんと分析することで、財務諸表に表れない、本当の意味での「強み」を知ることができるようになります。

・これまでの歴史の中でどのようなヒット作があったか
・会社の方向性を決定するようなイノベーションはあったのか
・これから強みとなるのはどのような事業、製品、技術、サービスなのか

これらもまた、未来の「使命・めざす姿・価値観」のヒントになるでしょう。

*3:タンジブルアセットとは
(tangible asset)有形資産
有形資産は、財務諸表の勘定科目に示されるような建物や設備、製品などの目に見えるもの。
*4:インタンジブルアセットとは
(intangible asset)無形資産
無形資産は、人材、人的能力、仕組みやノウハウ、技術、企業の持つネットワークなどを指す。

ミッション・ビジョン・バリューの策定と目的

分析したことに「経営者の想い」を照射することで、その企業の未来の理想像である「使命・めざす姿・価値観」が立ち現れます。
その「使命・めざす姿・価値観」を実現するための大枠のシナリオまで考えることが、ミッション・ビジョン・バリューを策定するということです。

ミッション・ビジョン・バリュー策定の最大の目的は、従業員一人ひとりの意識を変えることです。
なぜなら、意識が変われば行動が変わり、行動が変われば会社が変わるからです。
そうやって一歩一歩、成長や発展に向かうために、経営者はしっかりと過去を振り返って「使命・めざす姿・価値観」を描きましょう。

企業継続のために経営者が持つべき「複眼システム」

世界と未来を見つめ
新しい価値の創造を通じて
人々の幸福に貢献する

これは、デンソーの経営理念の一部です。

「世界と未来を見つめ」という部分は、世界という「空間」と、未来という「時間」を注視することを表明しているのです。

これは、企業がゴーイングコンサーンであることと大きく関わっています。
継続する責任がある企業は、自社を取り巻く「空間」と「時間」をしっかりと分析して行動することが不可欠です。

このとき「複眼システム」が必要となります。
企業を取り巻く時間と空間について分析を行う際に「2つの視点」から行うということです。

複眼システムの2つの視点

一つ目の視点は「現在を起点に近未来へと時間を進める視点」です。
現在の環境から5年後、10年後といった近未来の環境を予測します。

2つ目の視点は「遠未来から近未来へと時間を巻き戻す視点」です。
30年先、あるいは50年先の未来を見通し、そこから近未来(例えば10年先)へと時間を巻き戻していくのです。

時間的に未来へ、空間的に自社の製品をめぐる環境へ目を向け、もっと広い俯瞰で世界を見る必要があります。

たとえば、
・その時日本の人口がどうなっているか
・世界の市場
・地球環境はどうなっているのか

地球規模の未来の姿に思いを馳せる必要があります。

・地球規模での人口増加に伴う食料不足
・エネルギー供給への不安
・地球環境の悪化

これらの諸問題はすでに始まっており、解決にも長い時間が必要だと予測されています。そうなると、必然的にそれらが「自社を取り巻く環境」として存在し続けることになっていくのです。

「複眼システム」での環境分析により、より広く、立体的な環境分析が可能になります。単純に現在から未来を予測するだけではなく、一度視点を遠未来へと飛ばすからです。地球規模での大きな潮流を理解しつつ、現状から乖離のない、地に足の付いた環境分析を実現できます。

複眼システムの空間と時間

「複眼システム」による環境分析を通じて得られるのは、時間的な広がりだけではありません。
遠未来を予測する上で自社を取り巻く環境だけではなく、地球規模での環境変化も考えることができるでしょう。

現代の経営環境では、グローバル化、高度情報化が進んでいます。
地球規模のステークホルダーが存在していくという「空間的な広がり」とも合致するのです。
会社のミッション・ビジョン・バリューを策定する前に、まずはこの「複眼システム」で「空間と時間」を意識した環境分析を行いましょう。

有限を無限に換える使命感を持ってマネジメントする

企業は、従業員を雇用し、さまざまな製品やサービスを提供します。
その企業活動を通して、提供している製品やサービスを利用しているお客様はもちろん、
雇用している従業員やその家族、そして社会そのものに対する大きな責任があります。

利益が増えれば良い。
自分たちさえ良ければ良い。
自分が生きている時代だけ良ければ良い。
このような考え方では、企業の経営者は務まりません。

経営者が持つべき大前提は、企業がゴーイングコンサーンであることです。
今の経営者がいなくなった後も、その企業活動は続くという意識と使命感を強く持つべきです。
つまり、企業の「使命・めざす姿・価値観」とは、経営者である自分がいなくなった後の姿でもよいことになります。

私たち一人ひとりの人間が生きられる時間は限られています。
しかし、誰かがこの世からいなくなった後も、世界はその誰か以外のために存在し続けます。
終わりは、おそらくありません。

企業の経営者は「自分以外のために」今やるべきことをしっかりとやるという使命感を持たなければならないのです。
自分以外のために何かをするのは嫌だという人は、今すぐ企業の経営は控えるべきでしょう。

ゴーイングコンサーンのもとに企業を経営し、企業を取り巻くさまざまなステークホルダーの満足を実現するためには、複眼システムを用いて「時間と空間」を意識した環境分析が必要です。
「時間」の面から複眼システムで分析して見えてくる「使命・めざす姿・価値観」とは、未来という時間の中で自分の企業がどのような役割を果たしているべきかということです。

そこに自分がいるかどうかは関係ありません。
また、「空間」の面から複眼システムで分析して見えてくる「使命・めざす姿・価値観」とは、地域の中でどうなっているか、日本の中でどのような役割を果たすか、あるいは世界でどのような役割を果たすかということです。

まだ誰も見たことのない未来という環境の中で、自分たちの使命・めざす姿・価値観を描くことが経営においては不可欠です。そして、それを描くためには「役割」や「使命」を意識せざるを得ないのです。
「使命感」や「役割意識」のない経営者は、自分たちの「使命・めざす姿・価値観」という未来を思い描くことができないでしょう。

自分の仕事を通じて未来の人類の幸福に貢献できることは嬉しいことではないでしょうか。
このような「使命感」は、仕事の場面でも不可欠な意識です。
時代をブレークスルーする新技術やシステム開発の原動力になるはずのものです。
ときには部下をモチベートする、もっとも基本的な原動力になり得るものかもしれません。

私たち一人ひとりの存在は有限です。
しかし、その仕事は、その思いは、時間や空間を超えて受け継がれていくかもしれないのです。

この「有限を無限に換える使命感」を一人ひとりが持ちつつ、今、目の前の仕事に取り組みましょう。
一人ひとりが未来に対する使命感を持って日々の仕事に臨めば、未来は今より良くなっていくはずです。

無料講座の最近記事

  1. “管理職”から“経営者”へと成長するために身に付けるべきこと

  2. 次世代リーダーを育成できるリーダーの心構えとポイント

  3. 「自主研活動」が「考える力」を育て、「考える力」が「自主研活動」を育てる

  4. 自主研とは~人と組織を強くする活動の進め方とポイント

  5. 部下育成・マネジメントを行うリーダーに必要なこだわりと視点

関連記事